東京銀座のうしお画廊で若林砂絵子展が開かれている(10月23日まで)。若林は1972年東京に生まれる。1997年多摩美術大学大学院絵画専攻を修了、2000年渡仏し2005年パリ国立装飾美術学校を卒業しディプロムを取得。しかし2008年パリで病気のため急逝した。享年36歳。父は若林奮、母は淀井彩子という現代美術の名門一家に生まれた。
2011年に多摩美術大学美術館で「表現する葦」と題する、若林砂絵子・吉田哲也二人展が開かれた。亡くなったあと沢山の銅版画やドローイング、テラコッタなどが残されていた。うしお画廊では何度も若林砂絵子展を企画している。
今回は水彩画が並べられている。前途を嘱望されながらも異教の地での若すぎる36歳の死は何とも痛ましい。本格的な画業はこれからだったとも思われるが、夭折した画家の作品は大家のそれとは異なり瑞々しく輝いている。あたかもアコヤガイの中で大粒の真珠に成長しつつある途上の過程を垣間見ているような新鮮な緊張感が感じられる。
長田弘が「クリストファーよ、ぼくたちは何処にいるのか」で書いている。
夭折こそは、すべての若い芸術家を駆りたてる
もっとも純粋な夢、ぼくたちの
夢のなかの夢であるもの。
けれども冷めたい夢の汗にぬれて
不意にふるえて ぼくはめざめる。
青年の栄光なんて、今日
酔い痴れることと 自動車事故で
ぶざまに死ぬことにしきゃねえんだ。
あたかも偶然のように死ぬ、
それだけがぼくたちを未来に繋ぎとめている
唯一のパッションなんだ?
おお 誰れが信じようとしなくとも
時は短かい、ぼくたちに
時はさらに短かいのだ。
夭折を不運だなどとは思いまい。人はいつか必ず死ぬ運命にある。でも長寿を全うしたという誰がもう何もかもやり切ったと断言できるだろう。誰もが人生を中途退場するのだ。そうだとすれば、どんな人生もある意味完全で完結していると言っていいのじゃないだろうか。
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若林砂絵子展
2021年10月18日(月)―10月23日(土)
11:30-19:30(最終日17:00まで)
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うしお画廊
東京都中央区銀座7-11-6 GINZA ISONOビル3F
電話03-3571-1771