東京都美術館で福田美蘭展を見る


 東京都美術館福田美蘭展が開かれている(9月29日まで)。同展のちらしより、

 福田美蘭(ふくだ・みらん/1963年〜)は、東京藝術大学に学び、同校の卒業制作展および修了制作展を経て、現代日本美術展や日本国際美術展への出品など、上野そして当館を主な舞台にそのキャリアを積んできました。史上最年少での安井賞受賞(1989年)に象徴されるように、彼女は若くして独自のスタイルを切り拓いた作家であり、現在も旺盛な創作活動を行っています。

 福田美蘭はグラフィックデザイナーでトリックアートの福田繁雄の長女、会場に展示された履歴によれば祖父は絵本画家だった。美蘭も父のトリックアートの影響を色濃く受けているようだ。

 ちらしの裏面から、上左は「秋−悲母観音」、狩野芳崖の悲母観音を借り左下に震災に襲われた土地を描いている。上右は「ポーズの途中に休憩するモデル」、レオナルドのモナリザがポーズしている途中で休憩しているという図。下左は「世界貿易センタービルの展望台」、9.11で破壊された貿易センタービルの展望台からの眺望を、絵葉書をもとに描き起こしたもの。下右は「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」、同題の北斎の版画を左右逆版にしたもの。
 ほかにも雪舟や大観をパロったもの、孫を描いているところの安井曾太郎とその孫を描いたもの、ブッシュ大統領に話しかけるキリスト、噴火後の大きく崩れた富士山、床に置かれ踏んでもよいという絵画、冷蔵庫の中に描かれた風景画等々、トリックや諧謔に満ちた作品が並んでいる。
 福田の作品を見ながら、私は山口晃を思い出した。両者には確実に共通するものがある。コラージュの方法によってシュールレアリスティックな世界を描き出していること、時代を混淆させること、巧みな描写技術など。
 しかし、福田が東京都美術館で個展を企画されるなど、成功した画家に分類されるものの、ファインアートとしてはイマイチ斜めに見られている印象を消すことができない。対して山口はそのボーダーラインの内側に留まっているように見える。福田の作品はトリックやアイディアにより多く傾斜していると言える。それに対して、山口の作品では奇妙な時代錯誤が、それ自体目的ではなく、かなり強烈に濃いとはいうものの味付けに留まっているからではないか。ファインアートとしての山口の評価は福田より高いはずだ。
 とは言いながら、福田美蘭展、十分楽しめるものだった。入場料800円は安いと思う(私は高齢者枠で500円だったが)。不思議な福田美蘭ワールドをぜひ楽しんでほしい。
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福田美蘭
2013年7月23日(火)−9月29日(日)
9:30−17:30(9/27を除く金曜日は20:00まで)
毎週月曜日休館(祝日の月曜は開館、翌日火曜日休館)
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東京都美術館 ギャラリーA・B・C
東京都台東区上野公園8-36
電話03-3823-6921