吉岡まさみのユニークな作品コンセプト

 吉岡まさみ展が銀座4丁目のギャラリー58で行われたのは5月7日〜5月12日だった。その1階上にあるStepsギャラリーでも同時開催された。ギャラリー58での展示はこの写真のようなものだった。

 画廊の壁面に描かれたような形は実は紙テープが貼られている。吉岡はテープインスタレーションと呼んでいる。その制作手順は次のとおりだ。
1.B1の大きさの紙にマジックインクでドローイングする。
2.ドローイングを縮小コピーし、透明フィルムに転写する。
3.プロジェクターを使って、フィルム作品を画廊の壁に大きく投影する。
4.投影された作品の線の上をなぞりながらデザインテープを貼っていく。
5.テーピングはすべてスタッフが行い、作家本人は制作に加わらない。
 吉岡の作品のユニークな点は、制作最後の画廊の壁面へのテープを貼る作業をスタッフにまかせ、吉岡が一切タッチしないところだ。もちろんドローイングは吉岡が描くし、テープの色もどの壁面に投影するかも吉岡が決めているが、仕上げには一切タッチしていないのだ。
 似た作業をしている作家とどう違うのか。村上隆は工房でスタッフを使って制作している。しかし最後は村上がチェックして完成させている。
 もう一つはエスタンプの制作方法だ。有名作家の原画をもとに版画作家が再制作して完成した版画に有名作家がサインを入れる。これは単純に売上げ増のために行われている。有名作家は本当に自分の作品だとは考えていないのではないか。
 制作の一部に外部スタッフを介在させるのが共通だが、これら3者のコンセプトは全く異なっている。スタッフの介在によって作家が意図しなかったものを発現させ、それが自分の作品だと主張する吉岡まさみ、スタッフを道具として使う村上隆、収入のためにのみ作成されるエスタンプ。
 それぞれ似ていながら、ずいぶん違うものだ。