練馬区立美術館の中村正義展を見て



 東京都練馬区立美術館の中村正義展を見た(4月1日まで)。これがとても良かった。中村正義は1924年生まれの日本画家、はじめ中村岳陵に師事し、日展のスターとして期待されその審査員までつとめたが、情実で動く審査にいやけがさし、日展を脱退する。「人人展」を作り、それを発展させた東京展を企画する。東京展は当初日展に対抗した公募展を目指していたのだという。
 若い頃の正義は日展のスターと期待されたように繊細な日本画を描いている。それが突然大きく変貌する。原色を多用し、ポップアートの影響を受けたような人物を描き始める。おどろどろした人物が現れる。これは従来の日本画の範疇を大きくはみ出している。この変貌以後がとても面白かった。
 練馬区立美術館はそんなに広い会場ではないと思っていたが、パネルを多用し、正義の変貌を十分な作品点数で見せてくれる。とくに「赤い舞妓」「白い舞妓」「黒い舞妓」の3点が並べられたのが奇特で、今後いつまたこれが再現されるか分からないらしい。ただ、「黒い舞妓」は3月11日を最後に新潟市美術館に返却されてしまうので、早めに正義展へ足を運ぶことをお勧めする。
 映画の背景のために描かれた「源平海戦絵巻」全5図もすごかった。何十艘と描かれた源氏と平家の小舟の対峙から始まり、両者入り乱れての海戦となり、舟が炎上し、海に沈んでいく兵士たちが描かれる。圧倒的な筆力だ。
 中村正義がどんな画家だったかがよく分かる良い展覧会だ。
 美術館を出たあと、中村橋駅北口すぐのレストランふらんす亭でハンバーグカレーを食べた。カレーは焙煎してあるらしい。このハンバーグがとても美味しかった。いつもハンバーグは敬遠していたのに。
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中村正義展
2012年2月19日(日)−4月1日(日)
10:00−18:00(月曜日休館)
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練馬区立美術館
東京都練馬区貫井1-36-16
電話03-3577-1821
http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/
西武池袋線中村橋駅から徒歩3分