音楽家高橋悠治の言葉

 高橋悠治「きっかけの音楽」(みすず書房)より。

 モロッコの未来学者Mahdi Elmandjraのサイトで、こんな小話を見つけた 
 異文化交流にうってつけの実例(原文は英語)
 最近行われた国連による世界調査に次のような質問があった
 世界の他の地域における食糧不足についてどうぞご意見をおきかせください
 これは次の理由によりまったくの失敗だった なぜなら
 アフリカでは「食糧」とは何かだれも知らず 西ヨーロッパでは「不足」とは何かだれも知らず 東ヨーロッパでは「意見」とは何かだれも知らず 南アメリカでは「どうぞ」とは何のことかだれも知らず そしてアメリカ合衆国では「世界の他の地域」とは何か だれも知らなかった

 昔ゴダールの映画でトラックにピアノを積んだピアニストが畑のなかでモーツァルトを弾いている場面があった あの頃はマオイストだったポリーニも工場まわりをやっていたらしいが 志も流行とともに消え失せたのだろう

 ついで1974年に書いたというこどものための合唱曲より。エピクロスの哲学をテキストにしている。

テクスト−−3
ものとすきま


もののなかには すきまがある それは
どうしてもさわれないばしょ
かたいいわに みずはしみこむ
こえは かべをつきぬけ
はげしいさむさは ほねにしみる
すきまがなければ もののあるばしょはなく
それがうごけるところもない
みずのすきまをみつけて
さかなはすすむ

「水の隙間を見つけて魚は進む」には本当に感心してしまった。高橋悠治は気になる作曲家でありピアニストであり演奏家だ。でもよく分からない人だ。
 三宅榛名高橋悠治が2台のピアノで演奏するCD「いちめん菜の花」は私の宝物。2人の作曲したものが中心だが、ブレヒトの「三文オペラ」からの曲や坂本龍一ポーランドパルチザンの歌「今日は会えない」が入っている。このポーランドの歌が絶品。

三宅榛名の「いちめん菜の花」というCD(2007年12月27日)

きっかけの音楽

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