シンガポールの食中毒

 以前手相を見てもらったら、外国に全く縁のない手相をしていますねえと感心された。驚いた、当たっている。生涯2度だけ外国へ行ったが、いずれも会社絡みで望んで出かけたことはなかった。最初はアジア太平洋雑草学会へ参加させられたときで、インドのバンガロールに2週間近く滞在した。
 2度目がシンガポールでこれは3泊3日の社員旅行だった。その帰りの飛行機の中で腹痛と下痢に襲われ、何度もトイレへ駆け込んだ。同僚のI君は前日から下痢をしていた。成田へ着いて、素直な私だけが下痢の症状がありましたと申告した。係官が長い棒状のものを渡して、トイレへ行ってこれを尻に差し込み中でグルグル回してくれという。簡単な検便の道具らしいがちょっと屈辱的なものを感じた。
 成田ではその程度だったが、帰宅して1時間もすると保健所の職員が訪ねてきた。検便をしろという。そんなに簡単に出ないですよといったんは断ったが、1時間くらい暇を潰してまた来るからその間にしておいてくれと言う。後日保健所から呼び出しがあって、大腸菌が検出されたという。O-106とかいう名前で、有名なO-157に比べると毒性は弱いとのこと。それから都立病院へ行かされ、薬を処方されて毎回検便させられ、結局大腸菌が検出されなくなるまで病院へ通うはめになった。
 同じく下痢をしたI君は成田で申告しないで、帰宅して近所の医者へ行き、薬を処方されて終わったという。われわれ二人だけにこの症状が現れたので原因は推測できた。露店のしゃぶしゃぶという変な料理で、われわれ二人が組になってそれを食べたのだ。名前と異なり焼き肉のような料理で、肉や野菜を自分で焼いてタレを付けて食べるもの。すでに焼けたものに生のものが重なり、その時に大腸菌が付いたのだろう。
 旅行慣れしているHさんは生水を嫌って、東南アジアでもウィスキーのお湯割り一本で通したそうだ。