ごめん、私がにぶかった

 25年も経って不意に分かったことがある。当時10歳ほど年下の25歳くらいの女性デザイナーと二人で深夜まで残業したことがある。その時彼女が、私この前渋谷を歩いていたときナンパされて、それでやっちゃったんですよ、その後お互いに名前を言わなくて別れたんですけど、と言った話は以前書いた。その後、もう最終電車が終わってしまったと彼女が言った。会社は秋葉原にあり彼女は八王子に住んでいる。どうする? 彼のアパートに泊めてもらいますと言って電話した。いないみたい、電話に出ないんです。それは困ったなあ、家に泊めてあげようか、カミさんに聞いてみるよと言って電話するとカミさんはダメだと言う。当時2DKの団地に2、3歳の娘と3人で住んでいた。会社からバイクで10分、自転車で25分、歩いて1時間、タクシーでも2,000円くらいだった。ゴメンね、カミさんがダメだと言っているから泊めてあげられない、どうしようか? もう少ししたらもう一度電話してみます。再度電話すると彼が帰っていた。私彼のところに泊まります。やれやれ、めでたしめでたし。そして後日彼女が、××さんてスケベだけど口だけね、と言っていると聞いた。
 25年経ってやっと分かった。あの時私は誘われていたのだ。最初に彼のアパートに電話した時、本当はちゃんとダイヤルしていなかったのではないか。私に誘うチャンスをくれたのだ。だから2回目に電話したときはすぐに彼が電話に出たのだ。そうだったのか。彼女は可愛い子で巨乳で私は気に入っていた。しかしそれが分かった今、25年前に戻っても歴史に大きな変更はないだろう。私は気づかないふりをするはずだ。部下とそんなことになってはまずいだろう。すると、スケベだけど口だけねっていうのは本当に当たっているのか。情けないかもしれない。