演出術

 子供の頃「ルーシー・ショー」というテレビドラマがあって大好きだった。アメリカのテレビコメディで、ルシール・ボールという女優が主演していた。家庭劇みたいなたわいのないコメディだった。
 大人になって再放送を見て驚いた。ルーシーが相方の女優と話をしている。テレビ画面に、向かい合って話をしている二人の顔がアップで写っている。ノックの音がして、相方が「ルーシー、誰か来たようよ」と言い、カメラが二人の真ん中にあるドアにピントを送り、二人が両側に離れると同時にドアから新しい人物が現れてそのまま真っ直ぐ進み画面の中央に場所を占める。その間の人の流れが見事だ。
 単なるコメディだと見過ごしていたのにこんな洗練された演出がされていた。さすがハリウッドの国のテレビドラマだ。