WAITING ROOMの飯山由貴展「生きている百の物語」を見る

 東京文京区江戸川橋のWAITING ROOMで飯山由貴展「生きている百の物語」が開かれている(8月16日まで)。飯山は1988年、神奈川県生まれ。2011年に女子美術大学絵画学科洋画専攻を卒業し、2013年に東京芸術大学大学院美術研究科油画を修了している。2011年に銀座ギャラリー女子美で初個展、その後ギャラリーJIKKAやWAITING ROOMなどで個展を続けている。今年の横浜トリエンナーレにも出品しているという。

 今回2つのスクリーンを使って映像作品を展示し、パネルに不思議な物語をプリントしている。ギャラリーのホームページから、

……別のスクリーンには、アイヌの神話「猫の神様になった少年」の語り、および、シーシュポスの神話についてのギリシャ人の男性と作家のすれ違いの会話を、直島と向島で撮影した映像や、地元の人が作成した新聞記事のスクラップブックの映像に重ねている。

 

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 この「猫の神様になった少年」が面白かった。アイヌの老婆?がぼそぼそ語っている。それが日本語と英語の字幕で表されている。スクリーンには野良猫がエサを食べているという語りとあまり関係がない映像が流れている。

 兄弟が同じ場所で暮らすのはよくないと弟が出ていった後、盗賊に襲われて兄とその妻が殺される。幼い息子は何かの陰に隠されて生き延びる。その子を兄が飼っていた猫の夫婦が育てる。鳥やウサギの肉を焼いて食べさせるが、器がないので煮物を食べさせることができないと猫の夫婦は嘆く。猫たちは少年に肉を食べさせるが、自分たちは食べないで少年が寝た後に鼠を食べている。ある時若者たちが現れて器をくれて、初めて少年に煮た物を食べさせることができた。猫たちは若者に事情を話し、明朝自分たちを撃って少年を連れていってくれという。若者たちの父は少年の叔父だった。叔父のもとで少年は長者になったというような話が続くが、それがとても興味深く面白かった。

 もう一つの映像は横浜に住み着いているギリシャ人の元船員との会話。シーシュポスの神話やら船員時代の話やらを聞いている。この時スクリーンに映し出されているのは、瀬戸内海の直島の新聞のスクラップで、産業廃棄物の違法投棄の島だった歴史を描いている。いずれも直接語りと映像の関係はないのだが、音声だけのものより面白く出来上がっている気がする。なぜだろう。

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飯山由貴展「生きている百の物語」

2020年7月11日(土)-8月16日(日)

12:00-19:00(日曜日17:00まで)月火祝 休み

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WAITING ROOM

東京都文京区水道2-14-2 長島ビル1F

電話03-6304-1877

www.facebook.com/waitingroomgallery