「幸福はぼくを見つけてくれるかな?」が良かった


 新宿初台の東京オペラシティアートギャラリーで「幸福はぼくを見つけてくれるかな?」という展覧会が開かれている(6月29日まで)。コンセプチュアルな作品を多く収集するコレクター石川康晴氏のコレクション展とのこと。映像作品が多いのだが、とくに小泉明郎の作品とオマー・ファストの作品が秀逸だった。
 小泉の映像作品《僕の声はきっとあなたに届いている(シングル・スクリーン・ヴァージョン)》について、カタログの解説から、

雑踏の中、若い男性が携帯電話で母親と会話をしています。男性は母親をしきりに温泉に誘い、普段の親子の関係が垣間見られます。ところが映像の後編で通話の相手の声とともに映像が反復されると、私たちを当惑させる事実が明らかになります。

 16分45秒の作品。3つの部分からなっている。最初が雑踏の中での携帯電話による母親との会話。ついで男性が子供の頃のことを母親にあてた手紙に書いている。もうあなたは手紙が届かないところに行ってしまった。あれっ? 最後に冒頭の雑踏の中での電話の場面が反復される。電話の相手の声が聞こえる。再び、あれっ? となる。会場の暗闇で声が詰まりそうになった。
 オマー・ファストの作品《コンティニュイティ》も映像作品。同じく解説から、

アフガニスタンから帰還した息子を迎えるドイツ人夫婦。兵士の帰還という設定を除けば、よくある家庭の情景のように見えます。ところが同じシーンが何度も繰り返され、そのたび息子は別の人物に入れ替わります。フィクションと現実の境界は曖昧になり、物語は悪夢のシナリオへと向かいます。

 見終わったとき40分も経っていた。夢中で見入っていて、そんなに時間が経ったのが不思議なほどだった。劇場映画では難しい映像だ。こんな表現ができるんだと感慨が深かった。
 ネタバレになってしまうので詳しく書けないが、すばらしい作品だった。この他、8人の作家の作品が紹介されている。時間に余裕を持ってゆっくりと見に行くことをお勧めする。
 1階上の常設展の会場では、「舟越保武:長崎26殉教者 未発表デッサン」展を行っている。デッサンだけで会場を埋めるというある意味大胆な企画だ。入場者数を気にしている美術館では決してできない企画だろう。
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「幸福はぼくを見つけてくれるかな?」
2014年4月19日(土)−6月29日(日)
11:00−19:00(金・土は20:00まで)
休館日:月曜日(ただし4/28、5/5は開館)
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東京オペラシティ アートギャラリー
東京都新宿区西新宿3-20-2
ハローダイヤル03-5777-8600
http://www.operacity.jp/ag/