山本弘の作品解説(52)「とら」


 山本弘「とら」油彩、F10号(53.0cm×45.5cm)
 1978年制作。このとき山本48歳、最晩年の作品。今回のK'sギャラリーの個展に出品している。今回、1971年制作からこの1978年制作まで8年間に描かれた作品を並べている。すると、この8年間で作風が変わったことが見てとれる。
 形がはっきりと描かれていた古い作品に比べ、この晩年のものでは何が描かれているかはっきりとは分からない。題名も書かれていないのでさらに分からないが、頭の上に角が描かれているようにも見えることから、おそらく鬼を描いているのだろう。鬼のモチーフはしばしば描かれてきた。(※訂正:虎を描いている。角と見えたのは耳のようだった)。
 鬼の顔だと思うけれど、それを明確に表す努力をほとんど放棄しているように思える。鬼というモチーフから出発して、色彩と筆触を主体に造形化しているように思える。色彩と筆触が大きなテーマになっているのではないだろうか。
 今回の個展では、最晩年の作品として「種畜場」とか形が曖昧なものがいくつも展示してある。画廊に足を運んで見てほしい。


※古い資料を見たら「とら」とあった。虎を描いたのだった。2016年11月27日訂正。