山本弘の作品解説(39)「青年」(再掲載)


 山本弘「青年」油彩、およそM25号(79.8cmx54.7cm)
 1968年の飯田市中央公民館での個展で発表された。何を隠そう、この絵のモデルは20歳の時の私だ。横向きにも見えるが、おそらく正面を向いている顔なのだろう。10年ほど前、勤めていた会社の女性にこの絵の写真を見せたらひと言「ゾンビ」と言った。うまい! 私はモデルになった時2浪をしていた。長髪で身長174cm、体重50kg、ガリガリに痩せていた。将来の展望もなかった。暗かったのだろう。それを過不足なくこうして定着している。
 この作品については2008年3月11日に作品解説(13)として掲載している。しかし当時の写真の色があまりにひどかった。今回飯田市美術博物館で展示されたものを撮影する機会があったので、ここに再掲載する。
 1968年8月の飯田市中央公民館の個展で発表された。これは19歳のときの私だ。たしか受験に失敗して2浪が決まったころではなかったか。十数年前、勤めていた会社の女性に絵の写真を見せたら「ゾンビ」と言われた。なるほど、言い得て妙とはこのことだ。自分では自覚がなかったが、こんなにも暗かったのか。頭上の黒い影は萬鉄五郎の「雲のある自画像」を思い出す。あの萬の描く男も半分死んだような姿だった。右側の陰はムンクの「思春期」の少女の不吉な影を連想する。当時の私を見て、山本弘は萬とムンクを連想したに違いない。良いモチーフを得たと思ったかもしれない。
 しかし、私のこととは別にこれは優れた良い絵だと思う。色彩と筆触がとてもきれいだ。実物の美しさが写真では伝わりにくいのが残念だ。

萬鉄五郎「雲のある自画像」

ムンク「思春期」
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飯田市美術博物館所蔵)