「ポルノ雑誌の昭和史」を読んで

 川本耕次「ポルノ雑誌の昭和史」(ちくま新書)を読む。昭和史とはいうものの、戦後のカストリ雑誌に少し触れているくらいで、実質的には1970年代以降の歴史が取り上げられている。
 ポルノ写真雑誌の最初は一般の書店で販売されることのない、いわゆる通販本として流通が始まった。この通販グラフ誌の初期のヒットとして松尾書房の「下着と少女」が挙げられている。これはシリーズ化して、特に第1集は25万部を売り上げるロングセラーになった。少女とうたっても20代だったし、ポルノとはいえ胸も見せなかった。ついで北見書房の「人形の家」シリーズがヒットする。
 その後無人自動販売機で売られた自販機本が現れる。著者の川本はこれらの歴史を書きながら、個々の出版業者の動向にも大変詳しい。それは川本が長くこれらの雑誌の編集者をしてきたからだ。みな小さな出版社で、時には編集者がカメラマンやデザイナー、モデルの調達までしたという。
 同じちくま新書荻上チキの「セックスメディア30年史」が、主に文献を読み込んで書かれたのに対して、本書は著者が体験してきたことを書いている。一種自伝的でさえあり、ポルノ雑誌の歴史を語るなかに著者川本の姿が立ち現れてくる。
 40年前に手にした雑誌がこのように作られていたのか。「ビニール本3大美少女」が紹介されている。みなどこかで見て顔は憶えていた。薬師丸ひろ子のそっくりさんと言われていたセーラー服が似合った小川恵子は20代後半、今でいえばほとんどアラサーだった! 篠塚ひろ美は超名門大学の学生で、生まれも育ちも目が眩むような立派な「お嬢さま」だった! 寺山久美は天井桟敷に所属したことがあって、この名前(寺山修司の姓)が付けられたのだという。
 さすがに通勤電車の中で読むのは憚られたので、所用で載った高速バスで一気読みしたのだが、おもしろかった。写真が多ければもっと良かったのに。

写真は小川恵子
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ちくま新書「セックスメディア30年史」を読む(2011年6月11日)


ポルノ雑誌の昭和史 (ちくま新書)

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セックスメディア30年史欲望の革命児たち (ちくま新書)

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