小磯良平の自己評価

 以前「小磯良平と山口長男」(2006年3月14日)というエントリーを書いた。

 小磯は在学中に帝展で特選をとり画壇に認められる。2004年世田谷美術館で行われた小磯良平回顧展を見た。若い時からすでに完成の域に達していて小磯の婦人像はすばらしい。肌や着物の質感、立体感、遠近法、すべてが完成されていて、高い評価がなるほどと納得させられた。
 だが、そこから先にうまく展開しない。群像や大きな室内の空間を描くことに挑戦する。戦後はマチスの影響も受けている。いずれも成功しない。一方画壇や市場の人気は高まるばかりだ。
 小磯には分かっていたと思う。自分が婦人像のうまい画家にすぎないことが。辛かったに違いない。

 先日ベテランの画家と話したとき、小磯良平は熱烈なファンがいたにもかかわらず、本人は「自分の絵は(歴史に)残らない」と言っていたという。やはり分かっていたのだ。