講談社のPR誌「本」の表紙を現代美術が飾っている。月刊誌なので毎月表紙に一人の画家の絵を取り上げ、表紙裏と本文を1ページ使って丁寧に解説している。取り上げられた画家は、東島毅(右写真)、山口晃、三瀬夏之介、中村一美、福田美蘭、津上みゆき、大岩オスカール等々。画家の選択と絵の解説を高階秀爾が担当しているが、画家の選択も納得がいくものだし、作品の解説も秀逸だ。この大御所のお爺さん評論家がなぜ? と思ったが、高階先生はVOCA展の実行委員長をしている。
VOCA展の趣旨。
1994年に始まったVOCA(ヴォーカ)展は今回で14回目を迎えます。VOCA展は全国の美術学芸員、ジャーナリスト、研究者などに40才以下の若手作家の推薦を依頼し、その作家が平面作品の新作を出品するという方式により、毎回、全国各地から未知の優れた才能を紹介してきました。
VOCAはThe Vision Of Contemporary Art の略。今年の大賞は山本太郎「白梅点字ブロック図屏風」だった。賞金300万円。
実行委員長が高階秀爾、副委員長が酒井忠康ほか、委員が建畠晢、本江邦夫、宮崎克己ほか2名。このほかというのは協賛企業などから参加している人たち。そしてVOCA賞の選考委員を高階、酒井、建畠、本江、宮崎の5人が勤める。
全国からバリバリの若手作家らが集められ、選考委員5名によって大賞、奨励賞、佳作賞、大原美術館賞、府中美術館賞が決まる。高階先生はここに参加することで現代美術の鮮度の高いところを学べるのだ。「本」の表紙の選択や作品解説がツボにはまっているわけがこれだった。
さてVOCA大賞である。今年受賞した山本太郎にしろ、昨年の小西真奈、一昨年の日野之彦、その前年の前田朋子と代々の大賞受賞者がいつもフーテンの寅さんだ。出品作にはいいものが多いのに、なぜ大賞はこんなことになるのか。それは5人の選考委員の協議によって決まるからではないのか。
ギャラリームカイの川西さんから聞いた譬え話を受け売りすると、「みんなで相談して行った映画に面白いものがありますか」。相談すればつまらないのが選ばれる。昔、カミさんの両親とカミさん、それに私の4人で見に行った映画は寅さんだった。寅さんを劇場で見たのはこの1回だけだ。
VOCA展に展示されるのはは全国の美術学芸員、ジャーナリスト、研究者などが推薦した作家たちだ。優れた作家たちが多い。ところが大賞を選ぶために複数で協議すると寅さんが選ばれてしまうのだ。