講談社の雑誌『本』の表紙とコバヤシ画廊の濱田樹里展


 講談社のPR誌『本』9月号の表紙が濱田樹里の絵だ。作家の選択と作品の解説は大御所高階秀爾が担当している。濱田樹里は1975年、インドネシア生まれ。愛知県立芸術大学大学院美術研究科を修了している。2003年から毎年銀座のコバヤシ画廊で個展を開いている。
 高階秀爾の解説より。

……濱田樹里がその作品の主要モティーフとして取り上げる花たちは、そのようなはかなさとはおよそ無縁なたくましさを見せる。そこでは花弁も花蕊(かずい)も人間を呑みこむほどに巨大化され、熱を帯びて燃え上がる鮮烈な赤を主調音に、金や白や黒などの響きを伴いながら、奔流のように激しくうねり、渦巻き、犇(ひし)めき合い重なり合って、高さ2m、幅11mを越える空間を隙間なく埋め尽くす。ダイナミックなその流れは、長大な画面をも越えて、見る者をすっかり取り囲むような印象すら与える。それは花の表現と言うよりも、花に集約される植物相の、さらに言えば自然の生命エネルギーの壮観な交響なのである。

 高階は、「従来のいわゆる花鳥風月の穏和な表現とは異質の、過激なまでの激越な世界である。そのことは濱田自身認めているように、彼女の幼少期の体験と無縁ではないだとう」と続ける。濱田はインドネシアで生まれて小学校高学年までその地で育ったのだった。そして高階は「ここにも、きわめて独創的な現代アートの旗手が一人いるのである」と、その解説を締めている。

 まったくの偶然にも、東京銀座のコバヤシ画廊でまさにその濱田樹里展が開かれているのだ(9月15日まで)。高階の評価を実地に確かめるまたとない機会ではないだろうか。「見る者をすっかり取り囲むような印象」を体験してみてほしい。
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濱田樹里展
2012年9月10日(月)−9月15日(土)
11:30−19:00(最終日17:00まで)
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コバヤシ画廊
東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1F
電話03-3561-0515
http://www.gallerykobayashi.jp/