BUGの千賀健史個展を見る

 東京丸の内のアートセンターBUGで千賀健史個展「まず、自分でやってみる。」が開かれている(4月14日まで)。アートセンターBUGは以前有楽町にあったガーディアン・ガーデンを継承するアートスペースだ。ガーディアン・ガーデンはリクルートが管理するギャラリーだった。それを閉鎖して新しく東京駅八重洲南口に建つグラントウキョウサウスタワーの1階に移転してアートセンターBUGとしてオープンした。

 JR東京駅八重洲南口から徒歩3分という極めて便利な場所、アートスペースBUGはカフェが併設されていておしゃれな空間になっている。ギャラリー空間もそこそこ広く天井も高い。ただ必要以上とも思える天井高が必ずしもギャラリーとして使いやすいようには思えないし、解放された空間が作品に対峙する場所としてはいささか落ち着かない印象を受けた。


 今回個展が行なわれている千賀健史はガーディアン・ガーデンで第16回写真「1_WALL」のグランプリを受賞した写真家。1982年滋賀県生まれで、2008年に大阪大学基礎工学部を卒業している。キャノン写真新世紀優秀賞なども受賞している。

 BUGのホームページから、

本展では、2019年から約3年間にわたり千賀がリサーチしてきた特殊詐欺を取り巻く社会構造や個々人をテーマとし、写真、映像を含むインスタレーション作品を展示します。展覧会名と同名である「まず、自分でやってみる。」の作品シリーズは、千賀が詐欺犯や被害者などに扮して撮影したポートレートを水溶紙に印刷し、そこに水を吹きかけ、紙を溶かして作られています。この水溶紙は、実際に詐欺グループが証拠隠滅のためによく用いるもので、ほとんど原形を留めない紙からは顔貌が判別できず、そこに居た人/消えた人を想像することしかできないでしょう。特殊詐欺の被害額が最大となった2014年から、千賀が初めてこのテーマで作品を発表した2021年まで被害は減少傾向にありましたが、コロナ禍を経て2022年には8年ぶりに増加しました。本展では、被害が増加した背景にある社会や時代の変遷から影響を受けた個々の生活の変化に焦点を当てます。

 

     ・

千賀健史個展「まず、自分でやってみる。」

2024年3月6日(水)―4月14日(日)

11:00-19:00(火曜休館)

     ・

アートセンターBUG

東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー1F

https://bug.art/

 

 

ポーラ ミュージアム アネックスの「ポーラ ミュージアム アネックス展Vol.2」を見る

 東京銀座のポーラ ミュージアム アネックスで「ポーラ ミュージアム アネックス展Vol.2」が開かれている(4月14日まで)。今回は菊池奈緒と水永阿里紗、鶴見朋世の3人が参加している。

 

 菊池奈緒は1988年栃木県生まれ、2011年多摩美術大学絵画学科卒業、2013年同大学大学院修士課程修了、2023年カールスルーエ芸術アカデミーを卒業している。


 菊池はドイツを中心に公共空間を歩きながらイメージを収集し具現化している。特に窓やフェンスといった空間を隔てる境界線に焦点を当てて制作してきた。これらのモチーフは別の世界へ通じる「開かれた入口」を暗示し、遠い場所への憧れを反映しているという。

     ・

 水永阿里紗は1984広島県出身、2009年東京藝術大学絵画科油画専攻を卒業、2014年同大学大学院美術研究科博士課程美術専攻油画(壁画)研究領域博士号を取得している。

メメント・モリ

「第九」

 水永はドイツでステンドグラスを研究している。「メメント・モリ」はアンティークガラスにエッチング「第九」はフロートガラスにスクリーン印刷したもの。

     ・

 鶴見朋世は1994年三重県生まれ、2018年多摩美術大学生産デザイン学科テキスタイル専攻を卒業し、2023年にロイヤル・カレッジ・オブ・アートテキスタイル専攻を修了している。


 鶴見は、「日常に漂う、感覚的で曖昧な断片から流れる時間やリズムの美しさをテキスタイルとして紡いでいる」という。

     ・

「ポーラ ミュージアム アネックス展Vol.2」

2024年3月15日(金)―4月14日(日)

11:00-19:00(会期中無休)

     ・

ポーラ ミュージアム アネックス

東京都中央区銀座1-7-7 POLA銀座ビル3F

電話050-554-8600(ハローダイヤル)

https://www.po-holdings.co.jp/m-annex/

 

 

ササイ・ファイン・アーツの重野克明・三宅玄朗二人展を見る

 東京銀座のササイ・ファイン・アーツで重野克明・三宅玄朗二人展「ルールブック」が開かれている(4月13日まで)。二人は東京藝術大学でバッテリーを組んでいたとう。

 

 重野克明は1975年千葉市生まれ、2003年に東京藝術大学大学院修士課程美術研究版画専攻を修了している。主に77ギャラリーで個展を開いているが、高島屋美術画廊Xや養清堂画廊でも発表を繰り返している。


 今回重野はすべて野球をテーマに描いている。何を描いても重野は楽しい。ある重野の先輩画家が、彼は私小説だからと言っていた。

     ・

 三宅玄朗は1974年愛知県生まれ、2002年に東京藝術大学大学院修士課程美術研究科油画技法材料室を修了している。ギャルリー志門やアートもりもと、ササイ・ファイン・アーツなどで個展を開いている。

「ぼくのすきなせんせい」

 三宅玄朗はモノクロのちょっと怖いような絵と、ボテロばりの太った女性を描いている。その太った女性を描いた作品のタイトルが「ぼくのすきなせんせい」だから、本当にボテロが好きなんだろうなあ。埼玉県立近代美術館の前庭にボテロの大きな彫刻が置かれていたのを思い出した。

     ・

重野克明・三宅玄朗二人展「ルールブック」

2024年3月29日(金)―4月13日(土)

10:30-18:30(日曜・月曜休廊)

     ・

ササイ・ファイン・アーツ

東京都中央区銀座3-7-20 銀座日本料理会館2階

電話03-5159-7402

https://sasaifinearts.com/

 

 

 

 

ギャラリーSAOH & TOMOSのナオミ・ヴァン・ホルバット展を見る

 東京神宮前のギャラリーSAOH & TOMOSでナオミ・ヴァン・ホルバット展「White Thread/白糸」が開かれている(4月10日まで)。ホルバットは1970年英国生まれ、1989-1994年にロンドンのチェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインで学んでいる。2001―2003年に日本政府の研究生として東京藝術大学で油絵を学んでいる。ロンドンで個展を開いてきたほか、2001年にはギャラリー砂翁&トモス(本ギャラリーの前身)で個展を行っている。

「White Thread/白糸」

「Freeze/凍結」

「Blackbird/黒歌鳥」


 画廊の壁面に左右366cmという大きな油彩作品が展示されている。これが展覧会のタイトルにもなった「White Thread/白糸」で、「Freeze/凍結」や「Blackbird/黒歌鳥」という油彩作品の他に版画作品(モノタイプ)が並んでいる。

 いずれも極めて禁欲的な表現だが、強い主張が見えている。「White Thread/白糸」は4枚のパネルから構成されているが、1枚のパネルの天地が少し小さくて、右端の太いストライプとともに強いアクセントになっている。

 画廊の方の話では、版画作品は一見コラージュのように見えるが、まぎれもなく版画でしかもモノタイプだという。

 訪ねたとき、ちょうど午後の日が当たっていて、「Freeze/凍結」という作品の一部が日差しで欠けてしまった。

     ・

ナオミ・ヴァン・ホルバット展「White Thread/白糸」

2024年4月1日(月)―4月10日(水)

11:00-18:00(日曜休廊)

     ・

ギャラリーSAOH & TOMOS

東京都渋谷区神宮前3-5-10

電話03-6384-5107

http://www.saohtomos.com

 

 

ギャラリー檜B・Cのさとう陽子展を見る

 東京京橋のギャラリー檜B・Cでさとう陽子展「生きられる未完」が開かれている(4月13日まで)。さとうは東京生まれ。1981年に日本大学芸術学部美術学科を卒業している。1986年から毎年様々なギャラリーで個展を開いて活発に活動している。


 さとうの作品について3年前に書いたことを再録する。

 ゲシュタルトでいう図と地をさとうの絵画に当てはめてみると、図と地で成り立っているように見えて、その地がさらに下位の地に対して図となっているように見える。地の複層性というか図の複層性というか、今風に言えばレイヤー構造をなしていると言ってもいいかもしれない。複雑な構造とマチエールの特異さがさとうの特徴だろう。中心がないことでどこかオールオーバーにも近く、またそれを否定しているようにも見える。さとうの絵画は安易な定義を拒んでいる。それが魅力とも言えるのではないか。

 今回さとうは写真作品を2点展示している。さとうの写真作品は一層分からない。

 なお、4月6日(土)16:00~パフォーマンスを行うとのこと。

     ・

さとう陽子展「生きられる未完」

2024年4月1日(月)―4月13日(土)

11:30-19:00(最終日17:00まで)日曜休廊)

     ・

ギャラリー檜B・C

東京都中央区京橋3-9-9 ウィンド京橋ビル2F

電話03-6228-6361

http://hinoki.main.jp