山本弘展は明日が最終日

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 東京渋谷のアートギャラリー道玄坂で開かれている山本弘展も今日が6日目だった。明日25日が最終日となる。今回の目玉は30号の「種畜場」だ。山本自信の白が美しい。霧をモチーフにしたさの作品の美しさを実際に見てほしい。
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山本弘
8月19日(月)-8月25日(日)
11:00-18:00だが、土曜日は19:00まで、日曜は17:00までとなっている。
アートギャラリー道玄坂は、
東京都渋谷区道玄坂1-15-3 プリメーラ道玄坂102号室
電話03-5728-2101
http://www.artshibuya.com

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 渋谷マークシティの中をエスカレータを利用して4階まで進み、井の頭線の改札を過ぎて、銀行ATMの前を左折して外へ出る。そこから右手を見ると10メートルほどの先に看板が出ている。看板の前を左折すると、すぐ右手にギャラリーが見える。

 

山本弘の作品解説(70-2)「白い顔」

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 山本弘「白い顔」、油彩、F30号(91.0cm×73.0cm)
 制作年不詳だが、1978年10月に飯田市で開かれた生前最後の個展に展示された。以前この作品の解説として、「題名から白い顔が描かれているのだろうが、どれが眼鼻かと考えるとよく分からない」と書いた。現在開催している渋谷のアートギャラリー道玄坂山本弘展の会場でこれを見ていると、何が描かれているか見えてきた。これは愛子さん(奥さん)の顔に違いない。細面の顔で、ややうつむき加減の顔を大きく描いている。参考までに愛子さんをリアルに描いた図版を貼付する。

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 作品「白い顔」からは何が顔なのかほとんど分からない。他の作品にも言えることだが、山本にとって何を描いているかは重要ではないのだろう。現実に存在する具体的なものに触発されて描いているが、そのことを説明的に表現しようとは少しも思っていない。本当は私のように作品を文学的に見て、描かれているものを探ることは邪道なのだろう。ただ造形的に見ることが山本の意にもかなっているのではないか。
 山本は多様な傾向の作品を同時に描いている。今回の個展では30点余を展示しているが、3号の小品の風景画を除いて、すべて1976~78年(46~48歳)の3年間に描いたものばかりだ。たった3年の間でこんなにも多様な表現をしている。あらためて山本の創造力の優れていることに舌を巻く。

 

湊千尋『インフラグラム』を読む

 湊千尋『インフラグラム』(講談社選書メチエ)を読む。インフラグラムという言葉は湊の造語で、「情報化社会のインフラとなった写真や映像」のことだという。デジタル化されて写真や映像は世界を席巻している。世界に溢れている。
 港はデュシャンを参照したり、事件における捜査用似顔絵描きに言及したり、三上晴子のインスタレーションを援用したり、話題が多岐にわたる。2章と3章は軍事の分野における映像が取り上げられる。その中でアメリカが世界に張り巡らせている軍事基地について、基地帝国という概念を引用する。アメリカの支配構造について、領土を拡大する植民地ではなく、冷戦で勝ち取ったテリトリーに排他的な軍事基地を増やしていって、それらの集合で成り立っている領土を「基地帝国」と名づけていると。
 シナイ半島の基地からアメリカの大富豪ハワード・ヒューズの飛行機熱、武器として開発されたドローンなど、話題が次々と広がる。
 最後の5章で、東松照明やその弟子比嘉豊光の写真を通じて沖縄が語られる。
 沖縄についてチャルマーズ・ジョンソンアメリカ帝国の悲劇』(文藝春秋)の文章が引用されているが、これが興味深い。

日本政府は長年にわたり、アメリカ軍を沖縄に封じ込めておくためにあらゆることをしてきた。日本にあるアメリカ軍基地の約75%がこの島に置かれているが、沖縄は日本の国土全体の1%以下しか占めておらず、日本でいちばん貧しい県である。島と日本との関係は、プエルトリコアメリカの関係によく似ている。東京の政府はこの取り決めが気に入っている。国民が日本の領土にアメリカ軍の駐留を許すのは、自分たちの見えないところにいる場合だけだということを知っているからだ。

 個々の話題はとても興味深いのに、映像が世界を席巻していることを軸にして様々な事柄に話が飛んでいく。そのあたりのまとまりに少し無理があるのではないか。映像や写真と、社会問題と、2極に分かれている印象が強かった。

 

 

 

インフラグラム 映像文明の新世紀 (講談社選書メチエ)

インフラグラム 映像文明の新世紀 (講談社選書メチエ)

 

 

半藤一利『「昭和天皇実録」を読む』を読む

 半藤一利『「昭和天皇実録」にみる開戦と終戦』(岩波ブックレット)を読む。「昭和天皇実録」を読み込んで、開戦と終戦に関する昭和天皇の関与を分析している。
 軍部は日中戦争の泥沼化を打開しようと南部仏印に進駐することを企てる。天皇が各国に影響を及ぼさないかと杉山参謀総長聞いたところ、なんら各国に影響するところはない、作戦上必要だから進駐しますと答えた。しかしその結果英米は資産を凍結し、石油の対日輸出を全面的に禁止した。石油の備蓄は海軍が1年半活躍できるほどしかなく、石油を求めて南進せざるを得なくなる。
 軍部の無責任な予測に天皇も政府も翻弄される。しかし軍部は統帥権の独立を言っていて、内閣は軍部をコントロールすることはできない。軍部が直属する天皇憲法の規定によって直接政治に口出しができない。軍部の独走の体制ができていた。
 昭和20年は東京大空襲があり、制空権も制海権アメリカに奪われている。連合国側は無条件降伏を突き付けていた。戦力もほとんど残っていない。それなのに降伏しなかったのは、無条件降伏と戦争責任者の処罰をしないことを降伏の条件としたかったからだ。どこかで勝利を得て、有利な条件で講和に持ち込みたいと考えていた。
 ソ連が宣戦布告し原爆が投下されても、軍部は本土決戦を主張する。御前会議が開かれ、最後に天皇ポツダム宣言を受諾して降伏することを決断する。
 これらの歴史の機微を半藤が読み解いて詳細に語っている。知っているつもりだったが、教えられることが多かった。

 

 

「昭和天皇実録」にみる開戦と終戦 (岩波ブックレット)

「昭和天皇実録」にみる開戦と終戦 (岩波ブックレット)

 

 

山本弘展が始まる

 東京渋谷のアートギャラリー道玄坂山本弘展が始まった(8月25日まで)。今回ベテラン画家のOさんに手伝ってもらって展示をした。私が採用したい作品をOさんが除き、私があまり評価しない作品をOさんは採用した。それはとても刺激的な体験だった。評価=好みってこんなに違うのか!
 いつもの展示と少し違っていると思う。Oさん、本当にありがとうございました。
 今回3号から30号まで32点の作品を並べた。ぜひ見に来てください。

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山本弘
8月19日(月)-8月25日(日)
11:00-18:00だが、土曜日は19:00まで、日曜は17:00までとなっている。
アートギャラリー道玄坂は、
東京都渋谷区道玄坂1-15-3 プリメーラ道玄坂102号室
電話03-5728-2101
http://www.artshibuya.com

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 渋谷マークシティの中をエスカレータを利用して4階まで進み、井の頭線の改札を過ぎて、銀行ATMの前を左折して外へ出る。そこから右手を見ると10メートルほどの先に看板が出ている。看板の前を左折すると、すぐ右手にギャラリーが見える。