コバヤシ画廊の為荘真吾展を見る

 東京銀座のコバヤシ画廊で為荘真吾展が開かれている(5月28日まで)。為荘は1978年東京都生まれ、2005年に武蔵野美術大学造形学部日本画科を卒業し、2007年に同大学大学院造形研究科美術専攻日本画コースを修了している。2007年以降個展を繰返し、コバヤシ画廊では2013年以来5回目の個展となる。

 為荘は1年間の留学の予定でメキシコへ渡ったが、コロナ禍に遭い、2年間メキシコで過ごさなければならなかった。そしてメキシコでコチニール染料を使って大作を完成させることになる。

 コチニール染料は日本画の材料でコチニールカイガラムシから作られる。メキシコが産地で、メキシコでなかったら、これだけ大量に使うことは難しかっただろうという。コチニールカイガラムシについて、河合省三『日本原色カイガラムシ図鑑』(全国農村教育協会)から引く。

 

 サボテンに寄生する中南米産のコチニールカイガラムシ(エンジムシ)の虫体にも多量の紅色の色素が含まれている。この虫体から得られる色素は“コチニール”として知られ、やはり古くから食用紅や口紅の減量とされたほか、各種織物の染料に用いられてきた。コチニールアニリン染料が合成されるまでは、退色しない赤や紫の重要な色源として、メキシコを中心に大量に養殖・生産されていた。近年の“自然食品ブーム”の中で、合成色素にかわってコチニールが再び見直されつつあるという。

 

 為荘の話では、メキシコのコチニールは日本の商社によってほとんど買い占められているという。私も市販のサンドイッチの原料にコチニールの名前を眼にしてきた。

 


 コチニール染料を大量に使用した為荘の作品は、いままで他で見たことのない不思議な色彩で迫ってくる。コバヤシ画廊の壁面にあつらえたようにピッタリした展示になっている。奥の小部屋には木版画の商品も並んでいた。

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爲壮慎吾展

2022年5月23日(月)―5月28日(土)

11:30―19:00(最終日は17:00まで)

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コバヤシ画廊

東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1

電話03-3561-0515

http://www.gallerykobayashi.jp/