コバヤシ画廊の佐藤希展「樹々をぬけて」を見る

 東京銀座のコバヤシ画廊で佐藤希展「樹々をぬけて」が開かれている(9月15日まで)。佐藤は1986年神奈川県生まれ、2011年武蔵野美術大学造形学部日本画学科を卒業し、2013年同大学大学院造形研究科美術専攻日本画コースを修了、2013-2017年武蔵野美術大学日本画学科研究室助手を務めていた。
初個展は2015年銀座スルガ台画廊の「第49回レスポワール新人選抜展」、2012年に創画会展に初入選している。
 佐藤の制作コンセプトを引用する。

川辺の風景、水面に落ちる光、滞留する空気と淀み。
それらを取り巻く情景から聞こえる音、感じる温度。
相反して、自分の中に抱く存在への不安感。
実像の風景を描きながら、それは心象風景でもある。
喪失と再生を繰り返すその風景を目の前に、目に見えない向こう側を想像し、
自身の根幹を探ることそのものの行為が、私の絵画のモチーフである。




 大きな作品が3点展示されている。正面と左側の作品は左右390.6cmもある。右側の作品も260.6cmだ。いずれも暗い川を描いている。全体に暗い画面だが、速い流れの水面に光が反射して、そうか、暗いと見えたのはこの光を際立たせるためだったのかと納得する。川岸の暗い草木に取り囲まれて川面が明るく輝いている。
すると、この画面そのものが画家の内面なのかもしれない。日本画の単なる花鳥風月ではなく、画家の屈折した内面を自然の情景として描き出しているのだろう。面白そうな作家に出会えたのだった。
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佐藤希展「樹々をぬけて」
2018年9月10日(月)−9月15日(土)
11:30−19:00(最終日17:00まで)
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コバヤシ画廊
東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1
電話03-3561-0515
http://www.gallerykobayashi.jp/