川端裕人『我々はなぜ我々だけなのか』を読む

 川端裕人『我々はなぜ我々だけなのか』(ブルーバックス)を読む。副題が「アジアから消えた多様な「人類」たち」で、アジアには我々ホモ・サピエンスしかいないのはなぜかと問うている。現在はホモ・サピエンスだけだ。しかし直立原人や北京原人が存在したことがあった。そんな人類の歴史を川端は国立科学博物館人類史研究グループ長の海部陽介の講義や指導を受けながら記述していく。これは海部の研究を川端が分かりやすく一般向けに書いた古代アジアの人類史なのだ。
 人類の歴史はだいたい約700万年の歴史がある。大ざっぱにいって5段階があり、それは初期の猿人、猿人、原人、旧人、新人に分類される。初期の猿人が半樹上性で、猿人が直立歩行が常となった段階。原人は脳が大きくホモ・ハビリスと名付けられた。ホモ属で我々ホモ・サピエンスと同属だ。ホモ・ハビリスがアフリカにとどまったのに対してホモ・エレクトスユーラシア大陸に進出した。その後に旧人が登場した。ネアンデルタール人だ。その次に表れたのが新人のホモ・サピエンスで、クロマニヨン人縄文人などだ。
 直立原人、ピテカントロプスは現在ジャワ原人と呼ばれている。インドネシアのジャワ島で発見された化石から研究が始まった。ジャワ島には120万年前に原人が定着したと考えられる。そして5万年前ころまで生き延びていた可能性がある。
 今世紀に入ってインドネシアフローレス島で身長1メートルほどの小さなフローレス原人の化石が発見された。フローレス原人も5万年前ころまで生き延びていたらしい。
 ネアンデルタール人旧人)とクロマニヨン人(新人)は同時期に生存していた可能性があり、事実現世人類にはネアンデルタール人のDNAが数%含まれているという。海部はジャワ原人と現世人類も交雑していた可能性があるかもしれないと考えている。
 これを読んで私は古田武彦の説を思い出した。愛媛県には身長の非常に低い地域があって、古田はそれをフローレス原人が渡来してきていた痕跡なのではないかと言っていた。原人との混血については、むかし京大の今西錦司の学生がニホンザルに自分の精子を人工授精して混血を作る実験をしたいと計画したことがあった。学生はそれを反対されたが聞き入れなかったので、生まれた子を認知できるかと言って止めさせたという話を読んだことがあった。ニホンザルと人間でも混血が可能だということなのだろう。だったら原人と新人の混血は充分可能なんだろう。