ツタ紅葉



 盆栽のツタが紅葉した。大きな葉が鮮やかな赤に変わっている。毎年紅葉するが、暖かい気候が続いて急に寒くなると赤い色が一際鮮やかになる。だらだらと寒くなった年の地味な赤色とははっきり異なる。
 葉が大きいのは理由がある。この盆栽は実生から育ててまだ数年、おそらく10年未満なのだが、枝を切りつめて文人木風に育てている。そのため樹齢に比して枝数が少ない。必然的に葉の枚数が少なくなる。木は少ない葉で十分な光合成を確保しなければならない。すると1枚の葉を大きくしてその需要を賄うことになる。
 これらの条件が重なって今年は大きな葉が鮮やかに紅葉するのを見ることができた。以前、早々に寒気がやってきてツタがすべて落葉したことがあった。その後いったん暖かい日が戻ったとき春と勘違いしてツタが芽を出してしまった。葉が展開したあとで本当の寒気が襲ってきた。このときの紅葉は半ば透き通るような鮮やかな赤で今でも忘れられない。