樹村みのり「見送りの後で」

見送りの後で (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)
 樹村みのり「見送りの後で」(朝日新聞社)を読む。樹村みのりは昭和24年生まれの漫画家。地味な作風だが家族や社会問題を真剣に描き、センセーショナルなものとも無縁だ。そういう意味では吉田秋生南Q太とは反対だが、昔から好きな漫画家の一人だ。ヒューマニズムを素直に謳い上げるところが、い、いや、そうなんだけれど、と少しだけ引いてしまうのだが。
 5編の短編が収録されている。「見送りの後で」は母を亡くす話。「星に住む人々」は5歳で亡くなった姉とそれを悼む両親、そして私の現在の日々。「風のささやき」は失恋した女性の悲しみ。「また明日、ネ」は冬休みに独身の叔母のところで過ごす中学2年生の女の子。「柿の木のある風景」は隣の大きな家の衰退を描いている。
 短編小説のような味わいだ。