高野文子が樹村みのりの影響を受けていた

 鶴見俊輔高野文子と対談をしている! 「考える人」2008年夏号の「対談 幾何学と漫画」だ。高野文子は傑作「絶対安全剃刀」を描いたマンガ家だ。そこに収録されている「田辺のつる」のすごさ!

鶴見  影響を受けた漫画家はいますか。
高野  漫画を描き始めた十代後半に影響を受けたのは、圧倒的に萩尾望都先生です。
鶴見  萩尾望都は物語のつくり方が非常に新しかったけれど、その物語のつくり方に影響を受けていますか? 絵ですか?
高野  うーん、何といったらよいのでしょうか。物書きになる、机に向かう姿勢みたいなものの影響を受けているような気がします。技法とかではなくて、取り組み方みたいなもの。
鶴見  萩尾望都からの影響というのでは説明できないような気がするな。
高野  ほんとうですね。絵もストーリーもまるで近いところがありませんよね。萩尾先生も影響を受けましたって言われても困るだろうなあ(笑)。鶴見先生も書いておられましたが、樹村みのりさんという漫画家さんがいますね。
鶴見  あの人はおもしろいですよ。
高野  萩尾望都漫画で漫画家になろうと思ったんですが、実際に描き始めてみたら樹村みのりさんのつくり方にかなり近かったかもしれません。
鶴見  それならわかります。樹村みのりには、ある情緒が、核心みたいなものがあって、それが伝わってくる。樹村みのりなら、全然似てなくてもわかりますね。
高野  リアルタイムで昭和50年頃に読んでいます。(後略)

 へえ、高野文子樹村みのりの影響を受けているんだ。私も20代前半頃よく読んでいた。ここで樹村みのりの名前を聞こうとは思わなかった。この後、鶴見俊輔樹村みのりの「菜の花畑のむこうとこちら」って、おもしろいですよと言っている。探し出してまた読んでみよう。

絵は「田辺のつる」