あをば荘の「2人だけでも複雑/はじけて飛び散り、必然的にそこに置かれる」を見る

 東京墨田区のあをば荘で「2人だけでも複雑/はじけて飛び散り、必然的にそこに置かれる」が開かれている(7月18日まで)。本展は佐藤史治と原口寛子のユニットと関真奈美の3人展(2組展)。ここでは関真奈美の動画を紹介する。

 関は1990年東京都生まれ、主な展示に、「引込線」やTALIOMギャラリーなどがある。私も以前、トークンアートセンターのグループ展を見ている。今回、初期の動画作品「shadowing」も展示されており、それが面白かった。その動画の一部を静止画像で紹介する。

 街で見かけた人の動作をそのまま真似ていて、それがとてもおかしかった。

 



 あをば荘は週末の土曜と日曜、祝日のみ開廊している。東武亀戸線の小村井駅や東武スカイツリー線の曳舟駅、また京成押上線曳舟駅から徒歩で行くことになる。

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2人だけでも複雑/はじけて飛び散り、必然的にそこに置かれる」

2022年7月2日(土)―7月18日(月・祝)(土・日・祝日のみ開廊)

13001900

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あをば荘

東京都墨田区文化1-12-12

http://awobasoh.com/

 

 

スパイラルガーデンと小山登美夫ギャラリーの菅木志雄展を見る

 東京表参道のスパイラルガーデンと、東京六本木の小山登美夫ギャラリーで菅木志雄展が開かれている(スパイラルは7月11日まで、小山登美夫ギャラリーは7月9日まで)。

 菅木志雄についてはコレクターで長く現代美術を見てこられた長谷見雄二さんが、以前私が紹介した菅木志雄についてのブログに素晴らしいコメントを寄せてくれた(2020年8月28日)。それをここに再掲載したい。

 以下、長谷見さんの菅木志雄作品論。いずれも2020年の展示について書かれたもの。

 

菅木志雄さんは、1970年代から雑誌等を通して、また1980年代のどこかからはかねこ・アート等で実作で見ていますが、その頃はほとんど売れてなかったと思います。90年代から、旧作も大きな展覧会に展示されるようになって見に行きましたが、何か違和感を感じました。要するに、現代系画廊の質素なスペースでは床のビニルタイルや何度も塗り直された壁とぶつかりあって生まれていた物質的な強さのようなものが、軟弱なホワイトキューブでは空回りしてしまっているということのようでした。20年位前に横浜美術館で大きな個展をされ、その時は展示室の床を全部剥がした状態でされましたが、企画した学芸員がそういうことを感じたのでは、と思いました。これは結構、よかったと思います。しかし、その頃から作品がホワイトキューブに馴染むように、素材感や荒々しさが消えてきて、以後の作品にはほとんど関心を持てなくなってしまいました。売れるようになり、値段が上がったのもその頃からではないでしょうか。この展示を見る人は、「あ、現代美術館で見た菅木志雄だ」と思って感動するのか、と思いました。作家の人生においては、仕方がないことかもしれませんが。

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写真を拝見していて、色々、感じさせられました。前のコメントと少しかぶりますが。。。。 菅さんの本領は、やはり、①作品自体は残らないインスタレーションで、それに次いで、②廃材やホームセンター等に並ぶありきたりの資材、使用済みの封筒等を使った作品ではないか、と改めて思いました。①のインスタレーションで使われるのも大体、廃材や建設資材などでした。これらの作品群は、普段、無意識に過ごしている世界をひっくり返すように見せてくれます。②は本来、①の構想や準備のためのドローイングのような役割だったのを、ギャラリーが、売るように仕掛けて作品として世の中に出たのが始まりでしょうが、菅さんは、時間をかけて色々に検討した跡も見られ、ドローイングの意義・良さが十分にあると思います。 菅作品としてギャラリーの個展に並ぶのは、小ぶりのインスタレーションと②でしたが、バブルの頃、もの派の展示等にあわせて外注して制作されたと思われるインスタレーション規模の立体作品が現れるようになりました。求められた作品規模からそうなったのでしょうが、単に立派な展示会場に作品があるというだけで、作品が置かれた環境を違ったものに見せるということはなく、違和感がありました。しかし、その後、これが、菅さんのインスタレーションや大作のスタンダードになっていったと思います。90年代には、作品のためにわざわざ調達されたと思われる材料で、ドローイングではなく最終的な「タブロー」として制作されたと思われる大きめの作品が現れるようになり、次第に小さい作品にもそれが及んできます。菅さんとしては、作家として真摯に取り組んできた経過なのでしょうが、菅さんが、初期段階から独創性を評価されていたのとは違うものになっており、菅さん本人も、もしかすると自分でも意識しないまま、変わってしまったと思います。国際的に評価されるようになってからは、消失した初期作品の再制作もされていますが、ひと目で再制作とわかります。材料が特注されているし、全体にわざとらしいのです。

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スパイラルに出ているのは、「『菅作品にふさわしい』材料を精選・調達して制作したタブロー」で、かつての「『どう扱って良いかわからない残り物の資材や廃材』をいじくり回しているうちに世界を見直すきっかけが見えてきた状態」とは違うものだと思います。

バブルの頃のインスタレーション規模の大きな作品って見たのは青山でしたが、場所がよくわからないと思ったら、現代美術におけるバブル期の象徴のひとつ、東高現代美術館でした。ゴージャスなスペースでしたが、バブル崩壊とともに閉館して跡形もありません。作品が何点だったか覚えていませんが、強化ガラスを大量に使った作品もあり、材料費に1点、500万円、制作費は別といわれていました。菅さんをスターに押し上げようという考えもあったかもしれませんが、これでは、真にsite-specificなものは出来ません。こういうことが、その後の菅さんの制作に悪く作用したような気がしています。菅さん、スミマセン_(._.)_

 

【以下スパイラルガーデンの展示】


【以下小山登美夫ギャラリーの展示】


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菅木志雄展

スパイラルガーデン:2022年6月29日(水)―7月11日(月)

11:00-19:00

小山登美夫ギャラリー:2022年6月11日(土)―7月9日(土)

11:00-19:00、日月休み

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スパイラルガーデン

東京都港区南青山5-6-23 スパイラル1階

http://www.spiral.co.jp

 

小山登美夫ギャラリー

東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F

電話03-6434-7225

Tomio Koyama Gallery 小山登美夫ギャラリー – Tomio Koyama Gallery 小山登美夫ギャラリー

※麻布警察の裏手

 

 

チェーホフ『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』を読む

 チェーホフ『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』(光文社古典新訳文庫)を読む。訳者は浦雅春。先に話題になった映画『ドライブ・マイ・カー』の劇中劇として演じられていたのが「ワーニャ伯父さん」だった。

 私は10代後半の頃チェーホフの小説を夢中になって読んだ。見事だと思った。そしてチェーホフの戯曲「ワーニャ伯父さん」「三人姉妹』「かもめ」「桜の園」を読んだが、いずれもその面白さが分からなかった。

 後にカミさんと会ったとき、彼女から戯曲は舞台を想像して読むべきものだと教わった。それは理屈として分ったが、どう読めば良いのかまでは分からなかった。

 20代始めのころからアングラ芝居を見ていった。演劇センター68/71(後の黒テント)が好きで追っかけをしていた。その後でチェーホフの芝居を観た。チェーホフの芝居はとても面白かった。

 誰かが井上ひさしの小説を批判して、人物の造形が足りないと書いていた。井上は戯曲家だから戯曲のト書きに詳しい性格描写はしない。それは演じる役者の仕事だ。それを小説にも持ち込んでいるから小説として食い足りないのだ、というようなことだった。

 舞台で演じられるチェーホフの芝居は素晴らしかった。私が(多分今でも)戯曲をきちんと読みこなせていないのと裏腹だった。

 戯曲を読みながら、今まで見てきたチェーホフの舞台を思い出している。

 

 

 

ケン・リュウ『紙の動物園』を読む

 ケン・リュウ『紙の動物園』(ハヤカワ文庫)を読む。近頃とても評判の良い中国系のSF作家の短篇集。第1巻が本書で第2巻が『もののあはれ』、本書はファンタジイ篇、『もののあはれ』はSF篇とのこと。

 「紙の動物園」はお母さんが折ってくれた折り紙の動物たちが走り回るというもの。リュウ中華人民共和国に生まれて、11歳の時家族と共にアメリカへ移住した。おそらくアメリカでの差別体験がしばしば描かれる。

 縄を結んで文字の代りにする「結縄」、「太平洋横海底トンネル小史」は戦前中国からアメリカへ太平洋の海底をトンネルを掘って通路にしたという設定。そのため第2次世界大戦は起こっていない。

 「文字占い師」が圧巻だ。転勤した父親ついて台湾へ渡った少女リリーは転校先でいじめを受ける。それを救ってくれた老人の文字占い師とその孫と親しくなるが、ちょっとした誤解からリリーの知らないところで文字占い師はおそらくCIA?のリリーの父親から拷問を受ける。その拷問の描写が残酷で圧倒される。本書中最も印象に残った作品だった。しかし、拷問を取り去って見れば、さほど成功した短篇とは言えない。救いはないし、最後のオチがリリーが「もうヤンキースは好きじゃないの」というのも軽すぎる。

 さて、ケン・リュウが大変なアイデアマンであることはよく分った。続篇のSF篇である『もののあはれ』を読んでみよう。

 

 

 

ギャラリー川船恒例の「夏期入札展示会」が始まった

 東京京橋のギャラリー川船で恒例の「夏期入札展示会」が始まった(7月9日まで)。

 入札の方式は「二枚札方式」、これは入札カードに希望価格の上値(上限)と下値(下限)の二つの価格を書いて入札するもの。他に入札者のない場合は下値で落札する。上値が同額の場合には下値の高い入札者が上値で落札する。上値と下値の間に他の入札者が入った場合には、上値の高い入札者が上値で落札する。上値、下値が同額の場合は抽選となる。

 落札価格に別途消費税がプラスされる。

 なお、最低価格が設定されているので、その価格から入札することになる。入札の最小単位は100円となっている。

           中2点:長谷川利行

上:杉全直

麻生三郎

野見山暁治

中村正義

彦坂尚嘉

篠原有司男


 安いものは3,000円から、高いものは長谷川利行の330万円からと185万円から、砂澤ビッキの150万円からなどがある。杉全直は30万円からとなっているし、麻生三郎の版画は3万円台からだ。井上長三郎の猫の水彩が1万円からだった。瀧口修造の墨・水彩作品が78万円からはさすが。野見山暁治の水彩もデッサンも7万5千円からとなっている。平賀敬の水彩は50万円から、篠原有司男のシルクスクリーンは12万円からとなっている。

 7月9日土曜日の午後1時に入札締め切り、同1時45分より開札となっている。

 ギャラリー川船のホームページには145点の作品リストと画像、最低価格が載っている。

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「夏期入札展示会」

2021年7月4日(月)-7月9日(土)

11:00-18:00(最終日13時まで)

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ギャラリー川船

東京都中央区京橋3-3-4 フジビルB1F

電話03-3245-8600

https://kawafune.com/