笹木繁男「中村正義の生涯」が出版された!


 笹木繁男・著「ドキュメント 時代と刺し違えた画家 中村正義の生涯」が発行された。発行は『中村正義の生涯』出版委員会となっているが、笹木の私費出版だ。版型はA4判と大きく、総ページ数が382ページもある。カラー図版が60点掲載され、それが口絵14ページに収まっている。本文は横書き2段組みでものすごい情報量だ。
 中村正義は1924年に愛知県豊橋市に生まれ、敗戦の翌年1946年に開催された第2回日展に出品し、以後一度の落選もなく10回出品した。その間特選が2回、最後は審査員にまでなるが、日展の体質を嫌って退会する。その後、日展に対抗して「東京展」を創設するが、ガンのため1977年、52歳で他界する。
 現在、川崎市にある正義の自宅が「中村正義の美術館」として、春と秋の年2シーズン公開されている。設計者は篠原一男である。
 本書は中村正義に関する文献をすべて完全に網羅している。当時の新聞雑誌に書かれた展覧会評、記事等がすべて再録されているのだ。それでこんな大冊になったのだが、それが可能だったのは笹木繁男という人は、現代美術に関する資料を50年間にわたって徹底的に集めた人だからだ。数年前に上野公園にある文化庁文化財研究所へそれらの資料を寄贈しているが、段ボール箱に500箱もあったという。
 本書はそのほとんどが生の資料からなっているが、最後に「おわりに」と題して笹木の正義に関する主観的なエッセイが収録されている。その見出しだけを上げると、「正義とおんな」「正義とおかね」「正義が注目した作家とそのコレクション」「記憶に残る正義の作品」「正義の《うしろの人》(1977年)について」「日本画家正義と油彩画」「正義の仏画」「正義の風景画」「正義と写楽」「正義が目指した"日本派"「人人展」「東京展」」「正義と井上長三郎」「正義と画廊」「正義の没後展をめぐって」「正義の死と星野眞吾」とこれも至れり尽くせりに網羅している。中村正義の正にモノグラフで、今後正義を研究する者にとって必読の文献だ。索引も充実している。
 なお、本書は私費出版のため一般の書店では入手することができない。中村正義の美術館へ注文すれば、送料350円プラスで郵送してもらえる。また以下の都内の画廊でも扱っている。
 ギャラリー川船、ギャラリー戸村、森田画廊、ギャラリー58、羽黒洞木村東介、不忍画廊、日本画廊。
 定価3,500円。
中村正義の美術館
川崎市麻生区細山7-2-8 電話044-953-4936
info@nakamuramasayoshi.com