{自然}山形県大鳥池に生息する謎の巨大イワナ

地図を読む (自然景観の読み方 新装ワイド版)
 五百沢智也「地図を読む」(岩波書店)は文字通り地図の見方の本だが、唐突に巨大イワナのことが語られる。
 山形県西部を流れる赤川、その源流大鳥川は大鳥池から流れ出ている。

 以東岳から北西にのびる尾根には、大鳥池からまっすぐ登る登山道がついていて直登尾根と呼ばれています。(中略)その尾根の道の標高1150メートルの地点で、1982年7月19日の朝6時15分から6時30分すぎまでの間、私たち4人の登山チームは、眼下の大鳥池の水面に巨大な魚影、7〜8尾(同時に水面に出ていたものの最大数)を目撃しました。湖面を反時計まわりに回遊するヒメマスらしい魚群のクサビ形の波しぶきの中に入り込んで、一緒に回遊しながらその魚たちを補食しているような巨大な魚は、丸く黒光する大きな背中を浮き沈みさせて移動していました。背中だけでも1メートルはあるように見えました。皆で1つの双眼鏡をまわしながら、何度も眺めました。魚群が湖面をほぼ一周して少しずつ波がくずれ、消えたあとも、静かな水面に2〜3尾が浮かんだまま残って、食休みをしているように見えました。
 そのあと、この巨大魚の正体を、生息環境から調べようと、魚群探知器を利用した湖盆形態調査、水質、水温の垂直・水平分布、透明度の調査、空中写真判読による地形調査を実施してきましたが、まだ、完全に謎を解明するには至っていません。魚種はイワナの仲間らしいのですが、1メートル以上のイワナは存在しないというのが定説なのです。

 まだ知られていない巨大イワナが生存しているのだろうか。詳しく知りたい思いと、このまま誰にも知られることなくひっそりと生かしてやりたい思いが半ばする。