土地への執着が分からない

 株をやっている友人がいる。自己資金○千万円、信用取引でその3倍の金額を動かしていると言う。世田谷に1億円の一戸建てを2軒、マンションを3つ、ほかにヨットハーバー用の土地も買った。どうしてそんなに稼ぐのかと聞くと、俺のお祖父さんは大きな地主だったが、戦後の農地改革でほとんどの農地を取られてしまった。俺はその土地を取り返したいのだ。
 彼の土地への執着がよく分からない。昨年亡くなった親父の1周忌で親戚が集まった時、私がこの村の一番いい水田地帯がいまは工場やスーパーや学校になっていて驚いた、農村なのに田圃がなくなってしまうと言ったら、伯母が昔はあの辺の水田は皆お前の家のものだったんだよと言った。それは子どもの頃聞いたことがあった。聞いただけのことに実感はもてない。広い土地を所有するということに具体的な積極的な意味を見出すことができないのだ。そのため、いまそれらの土地を取り戻したいとは全く思わない。興味が湧かない。だから友人の土地への執着が不思議なのだ。