東畑開人『カウンセリングとは何か』を読む

 東畑開人『カウンセリングとは何か』(講談社現代新書)を読む。今たいへん評判で、なるほど面白い。東畑は専門のカウンセラーで白金高輪でカウンセリングルームを主宰している。そして実際のカウンセラーの仕事を詳しく紹介している。

 カウンセリングはフロイトユングアドラーから始まり、東畑は臨床心理学第4世代にあたるという。相談者(ユーザーと言う)と最初に会って(初診)、悩みとか問題点を聞く。同時に経済的なことも確認する。カウンセリングは結構お金がかかるらしい。

 私は30年ほど前にフォーカル・ディストニーという病気で防衛医科大学病院に通っていた。そこの整形外科の先生を紹介されたから。月に1度通っていて、診察料は毎回数百円だった。もし同じ病気で診療内科に通ったら、毎回1~2万円かかると言われた。また脳神経外科に通ったら脳に細い針を刺す治療を行ったという。診療内科やカウンセリングは費用がばかにならないのだ。

 東畑のユーザーの一人は週1回通うのを8年間続けたらしい。1回1万円だとしたら年間50万円で、それを8年間なら400万円になる。

 カウンセリングとは何か。東畑は、それを「不幸を謎解きする」という。謎解きの結果として、二つの指針が出てくる。「現実を動かす」と「心を揺らす」で、「現実を動かす」のが作戦会議としてのカウンセリングで、そこでは生存が目指される。まず身体を動かし、環境を動かし、からだを動かし、視点を動かす。まず心じゃないものを変化させ、そのあとに心の表面を変化させる。

 これに対して「心を揺らす」は、冒険としてのカウンセリングで、そこでは実存が取り組まれ、いかに生きるかが模索される。そのために、硬化していた心の表面を緩ませ、その裏にあった未成熟なままにとどまっていた心の再発達が目論まれた。

 このようにして、「破局を生き延びること」が達成される。

 本書を読んで、私も若かったころ、経済的にもゆとりがあったらカウンセリングを受けてみたかったと思った。あの頃いろいろ思い悩むことが多かったから。まさに悩み多き青年だった。それを解決するために読書に励んだのだった。

 本書は440ページと通常の新書の倍のページ数がある。その訳は、東畑が丁寧に書いているからだ。どうしてこんなに丁寧な書きぶりなのか。おそらく、東畑は普段必ずしも理解力があるとは限らない多くのユーザーを相手にしているので、どうしてもクソ丁寧な説明が身についてしまっているのだろう。

 むかし赤坂ACTシアター鄭義信演出、沢村一樹主演の芝居『しゃばけ』を見たことがあった。客席数1300という大きな劇場でS席1万円だった。あの『焼肉ドラゴン』の作・演出の鄭義信がクソみたいな演出をしていた。必要以上にくどくストーリーを念押しし、飛躍が全くない平板な演出だった。1300席を埋めるためにそんなアホみたいな演出が求められたのだろう。カウンセリングのユーザーたちも『しゃばけ』の観客とあまり変わらないレベルなのではないかと推測したのだった。