年末恒例の朝日新聞、読売新聞の書評執筆者による「2025今年の3冊」が発表された。
昨日、毎日新聞の今年の3冊を紹介したが、数人分を忘れていた。それに朝日新聞と読売新聞の分を加えて紹介する。朝日新聞は12月27日付け、読売新聞は12月28日付けとなる。
まず毎日新聞の続きから。
『日本経済の死角』河野龍太郎(ちくま新書・1034円)
本書は日本で長期にわたり不況が続いた理由として、企業が過剰に貯蓄し設備に投資しないことを挙げる。実質賃金は上がっていないが日本の生産性は上がっているという矛盾に注目し、「収奪」の内実を明るみに出す。
三浦雅士選
本書は説明不要だろうが、注目すべきは文体。主語は「おれ」。幼年を語って感傷を含まない文章は筒井文学を解く鍵。日本人にとって姓名とは何かまで考えさせる。
東直子選
『百年の短歌』三枝昂之(新潮選書・1815円)
百年の間に生まれた名歌を多様な切り口で分類しつつ、一人一人の書き手の特徴を詳細に伝える。中央歌壇で活躍した歌人だけでなく、文学者や科学者、投稿歌なども取り上げ、短歌の裾野を広げる力のあるアンソロジーである。
『とてもしずかな心臓ふたつ』村上きわみ(左右社・2530円)
インターネット黎明期にデビューし、現代短歌に風穴を開けた作者は2023年に亡くなった。過去作も収載したこの遺稿集には、「灯台の胴に巻きつく海風の、そうだね、すべてくつがえしたい」等、唯一無二の魅力が詰まっている。
次に朝日新聞の「書評委員19人の“今年の3点”」から、
有田哲文選
『日本政治思想史』原武史(新潮選書・2035円)
本書は分かりやすさと深さをあわせ持つ政治思想の通史。江戸時代の読書会から、自由民権運動の結社、そして敗戦直後の自主的な勉強会「庶民大学三島教室」へと連なる、この国の公論の系譜に勇気づけられる。
御厨貴選
記憶と今の対比の解像と言うならば本書は戦中派という人々の人生に迫った作品。それも戦中派総なめの勢いがある。新聞記者ならではのインタビューと書かれた文章を駆使して、戦中派の死んだ男と死ねなかった男のあり方を問う。手法としても見事の一語に尽きる。
本書は直木賞作家による小説の書き方指南。小説には「法律」があること。知らない世界を堂々と語る方法。文章を書く人すべてが読むべき希少なネタ明かしだ。
つぎは読売新聞の「読書委員(21人)が選ぶ2025年の3冊」
宮内悠介選
『わたしの人生』ダーチゃ・マライーニ、望月紀子訳(新潮クレスト・ブックス・2145円)
本書は第二次大戦下の日本で抑留された著者が、長い年月を経て、その記憶を小説にしたもの。
『百年の短歌』三枝昂之(新潮選書・1815円)
本書は俳句びいきの私の目にも眩しく映る現代短歌の豪華アンソロジー。ぜひとも一家に一冊を。
橋本五郎選
哲学という難しい学問をいかにやさしく書くか。その標本のような書である。哲学書を手にとってみたいという気にさせること請け合いです。








