原武史『日本政治思想史』(新潮選書)を読む。本書は放送大学の教科書を加筆改訂したもの。そのためか丁寧にやさしく書かれている。でありながら、丸山眞男の『日本政治思想史研究』に対して強く批判するなど、安易な啓蒙書とは全く違う。とくに西武線沿線と東急線沿線の比較を通じて得られた空間性という重要な視点、また大正天皇や昭和天皇を論じた業績などから「国体」という難問に対する優れた解答など、目覚ましい「日本政治思想史」だと言える。
国体とは何か。ポツダム宣言を受諾するに当たって昭和天皇が最後までこだわったのが、国体が護持されることだった。終戦の詔書でも「朕ハ茲ニ国体ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民の赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ」と述べている。
(……)ドイツの政治学者、ユルゲン・ハーバーマスにならって言えば、昭和天皇は宮城前広場を、「公衆の前で臨御する君主の人身によって「或る不可視の存在を可視的にする」」「代表的具現」の公共圏へと変えてゆくのです(『公共性の構造転換 市民社会の一カテゴリーについての探求』未来社)。この「或る不可視の存在」こそ「国体」にほかなりません。
原武史は、『〈出雲〉という思想――近代日本の抹殺された神々』(講談社学術文庫)、『滝山コミューン一九七四』(講談社文庫)、『昭和天皇』(岩波新書)、『レッドアローとスターハウス もうひとつの戦後思想史』(新潮選書)、『「昭和天皇実録」を読む』(岩波新書)など、私が読んだだけでも魅力的な著書を量産している。
今後とも注目して著書を読んでいきたい日本政治思想家だ。
