谷川俊太郎編『中勘助詩集』(岩波文庫)を読む。中勘助の『銀の匙』は「読者が選ぶ〈私の好きな岩波文庫〉」で漱石の『こころ』と『坊ちゃん』に次いで3位に入った。
解説で谷川俊太郎は書く。
「いい詩を書こう」ではない。「名作を残したい」でもない、「一日を浄くしよう」という態度で中さんは生き、そして書く。
中は「いい詩」も「名作」も書こうとしない。だから中の詩はつまらない。俳句も短歌もつまらない。
とにかくハンサムでモテ男、親友の美しい奥さん(万世)から本当はあなたが好きだったと告白され、その親友の死後は彼女からプロポーズされる。またもう一人の親友安倍能成の奥さん(恭子)との仲を安倍から嫉妬される。作家の野上彌生子からもプロポーズされる。しかし、中勘助はすべてのプロポーズを断る。そして友人の娘(幼女)たちに恋着する。幼女らにラブレターを書き、大きくなったら結婚しようと言う。膝に乗せ頬にキスする。しかし、8歳だった親友の娘(妙子)が16歳になって中勘助を父代わりに慕った時(彼女の父は亡くなっていた)、陰で「ぼくのペット」と呼び、その娘がやはりプロポーズしてきたときは無視した。
中は戦前長野県の野尻湖畔に滞在し、そこで『銀の匙』を書いた。野尻湖には何度も滞在し、湖の中の弁天島に籠って執筆した。明治から大正にかけての頃だった。私の友人の父親が野尻湖畔で旅館を経営していたが、友人は中勘助の野尻湖のエピソードを知らなかった。碑文とか建てて町興しをすれば良いのに(今は信濃町になっている)。

