河野龍太郎『日本経済の死角』(ちくま新書)を読む。副題が「収奪的システムを解き明かす」。藻谷浩介が毎日新聞に書評を書いている(2025年5月3日付け)。
……本書の記述は、過去の事実を数字(昨年比ではなく絶対数の長期推移)で検証し、その理由を推論し、対策を提言する、というプロセスを繰り返す。冒頭を例にとれば、「前世紀末以来直近までに、日本の労働時間当たり生産性は3割上昇したのに、実質賃金は横ばいだった(直近は円安による輸入物価高でむしろ低下した)」という残念な事実が示され、なぜそうなってしまったのか、どうすべきだったのか、という推論が続く。(中略)
著者は、競争の目先の勝者が利益を丸取りして抱え込む「収奪型」を続ける限り、合成の誤謬で内需は失われ、経済は再成長しないと指摘する。豊かさが世に遍く循環する「包摂型」に、システムを転換せねばならないと。
本書によると、過去4半世紀、日本の時間当たり生産性が3割も上昇しているにもかかわらず、時間当たり実質賃金が全く上がっていない。そのために個人消費は拡大せず、企業は国内の売上が増えないために、投資するのが海外ばかりとなっている。
ただ長期雇用性の枠内にいる大企業の正社員は、実質ゼロベアが続いていても、毎年の2%弱の定期昇給によって、実質賃金が確実に増えていく。一方で長期雇用性の枠外にいる人は、近年こそ労働需給の逼迫もあって高めの賃金上昇とはなっているが、元々の賃金水準が低く、賃金カーブもフラットに近いために、同世代の正社員と比べると格差は開くばかりとなっている。
その結果、昨年の衆議院議員選挙でもポピュリズム政党が躍進した。
河野は成長戦略より、所得再配分が優先課題だと言う。実質賃金を上げることによって日本の経済が成長する。生産性で日本より劣るドイツやフランスでさえ、実質賃金は増加している。日本の非正規雇用などが大きな問題なのだ。
