安部公房『けものたちは故郷をめざす』(岩波文庫)を読む。安部公房初期の長編小説、今まで安部公房の主要作はすべて読んだつもりでいたが、これは読んでいなかった。5年前に岩波文庫に収録されたので再読するつもりで購入したら読んだことがなかった。
1957年、安部公房34歳のときの作品。少年が戦後3年ほどたってやっと満州から日本へ帰国しようと、ソ連兵や中国国民軍、浮浪児などと関わりながら旅をする物語。中国からの帰還がこんなにも過酷なものであったのかと、驚くことばかりだ。氷点下30度という極寒の荒野で夜を過ごしたり、日朝混血だという怪しい男と同行するとか、ストーリーは冒険小説のように面白い。安部自身は1946年暮れに帰国しているので、自身の体験そのままではないが、身近で体験したものでなければここまで豊かな細部を書くのは不可能だろう。
しかし粗っぽいところも散見し、完成度としてはもう少しと言ったところ。
処女長編と言うべき『終りし道の標べに』も読みたいと思ったら、講談社文芸文庫が品切れになっていて、古本で12,000円もしている。
