神の啓示の言葉を集めたコーランによれば、異教徒は抹殺すべき対象である。彼らを奴隷化することも間違っていない。ジハードは最高の倫理的振る舞いである。(……)気鋭のイスラム思想研究者が、コーランを典拠に西側の倫理とはかけ離れた「イスラム教の本当の姿」を描き出す。
これがとんでもなく過激思想なのだ。テロを繰り返すイスラム過激派に注目が集まっている。一方イスラム教の主流は穏健派だ。穏健派は反テロ宣言を発している。だが過激派も穏健派もコーランに依拠しているのは変わりはない。コーランはイスラム教徒にとって否定のできない「神の言葉」なのだ。「コーランに立脚してさえいれば、そこから導かれる解釈がたとえ敵意をあおり戦争をけしかけるような過激なものであっても「正しい」というのがイスラムの教義です」と飯山は書く。「イスラム教においては、倫理的判断もその唯一の源は神であって、人間の理性ではないとされている・・・」
以前、バングラデシュで多くの日本人がイスラム過激派のテロで殺害された事件があった。イスラム過激派は日本人を殺害対象として規定していると飯山は書く。コーランには「あなたがたが不信仰者と出会った時はその首を打ち切れ」と記されている。コーランに従えばイスラム教徒以外は殺さなければならないのだ。
2014年「イスラム国」は奴隷制復活を宣言した。「不信仰者の家族を奴隷とし、その女たちを性奴隷とすることは確固たるものとして立証されたイスラム法の一側面なのだということを忘れてはならない」。イスラム教徒が異教徒と戦争して敵側の女を獲得したら、その女はイスラム教徒の所有する奴隷となる。その女奴隷を所有するものは彼女と性交することができるし、奴隷市場で売買することもできる。奴隷市場における女奴隷の価格は、10歳未満で約19,000円、10歳~20歳で約14,000円、21歳~30歳で約9,500円、31歳~40歳で約7,000円、41歳~50歳で約4,700円とされているという。
ただし異教徒ではあっても、ユダヤ教徒やキリスト教徒は、イスラム法上「啓典の民」としてカテゴライズされ、彼らにはイスラム教の統治に服し人頭税を収めることによって自分たちの信仰を保ったまま暮らすという選択肢が残されるという。
飯山は書く。
神は人間に対してあるべき世界の姿を示し、やらねばならないこと、やってはならないことを具体的に命じました。それを守るのがイスラム教徒であり、守らないのが不信仰者です。イスラム教徒は神の命令に従い、世界中の人々が神の法に従うようになるまで不信仰者の討伐を継続しなければなりません。彼らにとっては、飲酒や男女の混交は目に見える不信仰の象徴であり、優先的に粛清すべき対象です。
西洋型民主主義にとってイスラムは危険で恐ろしい宗教=哲学であることを本書で知ったのだった。
なお、著者の飯山陽は先の江東区長選に保守党から立候補し、今回の衆院選では保守党首の百田尚樹と対立して干されたとニュースになっていた。