川端康成『みずうみ』を読む

 川端康成『みずうみ』(新潮文庫)を読む。高校教師桃井銀平が教え子と関係し職を追われる。退職後もその教え子と付き合っていたが、彼女の親に見つかり離れ離れにされる。桃井銀平は別の少女を見初めストーカー行為を繰り返す。

 解説で中村真一郎が本作を絶賛する。

この作品は私にとって戦後の日本小説の最も注目すべき見事な達成だと感じられた。

 

 しかし、その解説中で中村は三島由紀夫の評価も紹介している。三島は中村に本書の不快な読後感を情熱的に語ったという。中村は、またフランスのヌーヴォー・ロマンの作家クロード・モーリャックと方法的に類似しているとまで言う。

 吉田義重はこの作品を原作に『女のみづうみ』という映画を作った。私も映画を見たがほとんど記憶にない。

 本書については三島由紀夫の評価に与したい。だが、もう一人の解説者角田光代も、「この小説には、かなり緻密に構成されたストーリーがある。登場人物たちは奇妙に入り組んだ関係を持ち、その関係は意外なほどまじりあっていく」と評価する。「読み終わってみれば、毎度毎度、小説の、無限に広がっていく可能性に気の遠くなる思いがする」と。

 川端は『伊豆の踊子』の少女や本書の女子高生、若い娘に対する嗜好が強い印象だ。本書は彼女らへの妄想を小説に構想したのではないかと推測した。角田の評とは逆に、いつもの行き当たりばったりの構成ではなかっただろうか。