どんな画家にも媚びがある



 山本弘の小品を並べてみた。いずれも6号という小さな作品だが、こうしてみると山本の別の顔が見えてくる。これらはいずれも晩年の作品で、小品でありながら取り付く島もないような印象を与える。特に最後となった1978年の個展では、奥さんに今回は絵は売らないと言い放ったという。そのことは昔針生一郎さんが山本弘について言った言葉を思い出させる。

 

どんな画家にも見る者への媚びがある、しかしこの人の絵には全く媚びがないね、ただ自分のためだけに描いている。

 

 ただ自分のためだけに描いている。潔いがそれだけ難しいことも事実だ。亡くなって今年で43年になる。山本弘がそのように長い間評価されてこなかったのも、その絵の難しさのためだった。ようやく理解者が現れて、今秋あたりから正式な個展が開かれそうだ。