東京京橋のギャラリイKで葉緑素為吉展「ドローイング」が開かれている(2月11日まで)。ドローイング展とタイトルにあったのに、画廊には床にスプーンが置かれていてドローイングは展示されていない。作家の葉緑素為吉さんにそのことを問うと、このスプーンの展示が私のドローイングですと言う。
よく見れば大中小3種類の大きさのスプーンが放射状に組み合わされて並べられている。その組み合わせは様々で、法則性を見つけることができない。かと言って出鱈目に並べられているのでもない。多くは放射状に並べられていて、中には直線状のものもある。
多分これらは強い意図を持って並べられているのではないだろう。事前にパソコンで簡単なシミュレーションをしたようだが、実際に床に並べながら形を作っていったのだろう。
作品を見ながら、ミニマル・アートとの異同を連想した。1kmのパイプを切断して並べた有名な作品があった。ミニマリズムは作品の意味を追求しない。意味を捨象する。何も主張しない。その点が葉緑素の作品に似ているが、ミニマリズムは徹底して意味を生みださないように作品を仕上げる。しかし葉緑素の作品は、そのことに執着しない。軽くしか考えていないのではないか。こだわりがないように見える。そこが葉緑素とミニマル・アートとの違いになるのではないか。要するに葉緑素の作品はミニマル・アートではない。もっと軽いものだ。飄々と制作しているように見える。どこか赤瀬川原平のトマソンに通じる軽さだ。
いろいろ考えさせられた。面白い展示だった。
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葉緑素為吉展「ドローイング」
2023年2月6日(月)-2月11日(土)
11:30-18:30(最終日17:00まで)
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ギャラリイK
東京都中央区京橋3-9-7 京橋ポイントビル4F
電話03-3563-4578