アートフロントギャラリーの浅見貴子展を見る

 東京代官山のアートフロントギャラリーで浅見貴子展が開かれている(12月5日まで)。浅見は1964年埼玉県生まれ、1988年に多摩美術大学美術学部絵画科日本画専攻を卒業している。1992年に藍画廊で初個展。その後各地で何度も個展を開いている。またアーティスト・イン・レジデンスで大原美術館に滞在して制作したり、ニューヨークに滞在して制作したりもしている。

 浅見はガラス絵のように紙の裏から描いている。また初期には抽象画を描いていたが、しばらく前から具象画、具体的には樹木の葉叢を描くようになった。

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 10年ほど前に高階秀爾が雑誌『本』に浅見について紹介した文章をここでも引用したい。

 

 一見したところ、画面は大小さまざまの墨の点を滴らせた抽象模様のように見える。大きな塊はまるで雪の上の動物の足跡のようであり、微細な点の連りは蟻の行列を思わせる。しかしそのなかでのびやかに伸びる描線に眼をとめると、乱雑に散らばっていると見えた点は葉叢(はむら)となって秩序づけられ、枝ぶりの豊かな樹木の姿が立ち現われる。同時に、白地の部分は遠くに拡がる空となり、空気が流れ、光に満ちた空間が生まれる。それは、墨による新しい世界創造と呼んでもよいだろう。(中略)

……明るい光と爽やかな空気が息づく清新な風景を生み出したこの作品は、たしかに一人の傑出した才能の存在を物語っているのである。

 

 浅見は庭の木を描いているという。抽象画から具象に変わって、描く対象が無限に広がったと言っていた。2018年には東山魁夷記念 日経日本画大賞を受賞している。納得のいく受賞だった。

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浅見貴子展「未然の決断」

2021年11月20日(土)―12月5日(日)

12:00-19:00(土・日 11:00-17:00)月・火曜休廊

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アート フロント ギャラリー

東京都渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラスA棟

電話03-3476-4869

http://www.artfrontgallery.com