東京初台のギャラリーZaroffで佐藤宏三個展「誘惑」が開かれている(9月12日まで)。ここに掲げたDM葉書は極めておとなしい絵柄で、ほとんどは緊縛された女性を描いている。SMの世界を描いた個展だ。佐藤さんは私とfacebook友だちの日本画家で、以前も吉祥寺の画廊で行ったグループ展を見たことがある。
私はこのSMの世界がよく分からなかった。一方私の古くからの親しい友人であるNさんはSMの趣味を半ば公言している。以前Nさんと話していた時に、もう50年近い昔の話をした。当時ヒッピーなどの生態というか風俗が日本でも流行りはじめていた。夏だった。電車に乗っていて吊革につかまっているとき、ふと右隣を見たら若い女性といっても私よりやや年上らしき女性がやはり吊革につかまっていた。彼女はノースリーブを着ていて左手で吊革につかまっていた。その時私の右側に処理してない彼女のふさふさの腋毛が見えた。何か禁じられているものを見た気がしてじっと見てしまった。彼女は私の視線に気づき、左手はそのままに、つまり腋毛は隠さないで軽蔑したように向こうを向いた。彼女はおそらく意識的に腋毛を伸ばし、それを隠さないことが彼女の生き方だったのだろう。その時、それまで色っぽかった腋毛が単なる毛に変わったのだった。もし彼女が恥ずかしがって腋毛を隠したら、私にとってその腋毛はエロチックなままだったのに、と友人に話した。
すると、彼は、それがSMだよと言い放った。それで私も初めてSMの極意の一端を知ったような気がした。相手の望まないことをすること。しかし、実はそこにはお互いの演技があり、本当に痛めつけることは少なく、主として羞恥心を責めることのようだった。
やはり50年前に禁じられていたヘアー(陰毛)が激しくエロチックな印象だったのに、それが解禁されて週刊誌などで普通に見られるようになったとき、ただの毛に格下げになった経験によく似ている。
佐藤宏三さんは絵柄から想像される人とは真逆で優しい穏やかな紳士のようだ。安心して見に行ってください。
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佐藤宏三個展「誘惑」
2020年9月3日(木)-9月12日(土)
13:00-19:00(最終日17:00まで)水曜日定休
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ギャラリーZaroff
東京都渋谷区初台1-11-9 五差路
電話03-6322-9032
http://www.house-of-zaroff.com
京王新線 初台駅中央口→(甲州街道)南口を出て階段を登り、商店街を右折、セブンイレブン角を右折し徒歩1分
1階が喫茶店で、玄関で履物を脱いで2階の画廊に上がる