東京天王洲アイルのTakuro Someya Contemporary Artで岡崎乾二郎展が開かれていた(8月29日まで)。岡崎は1955年東京生まれ、昨年から今年にかけて豊田市美術館で大規模な回顧展が開かれた。
岡崎に個人的な面識はないが、以前勤めていた会社の後輩が岡崎の従兄だった。もう40年近く前の事だが、後輩から岡崎が個展をしていると教えられた。終業後オートバイで駆けつけて見たギャラリーはどこだったのか、六本木だったような気がする。「あかさかみつけ」と題された立体的な不思議な作品が壁に展示されていて、とても印象に残った。ギャラリーの片隅に作家が立っていたが、特に挨拶はしなかった。後日後輩からなぜ話しかけなかったのかと軽く責められた。いや、私はシャイなものだから。
それ以来岡崎は気になる作家だった。同時によく分からない作品を作る作家だった。後輩は時々岡崎のことを話してくれた。色彩について理論的に語ることができるので、会社へ呼んでデザイナーたちにレクチャーする機会を作りたいとも言っていたが何故か実現しなかった。
岡崎の展示は気が付いた時はできるだけ見に行った。90年代からはあちこち画廊回りを始めたので、ゆーじん画廊や南天子画廊などでも岡崎の個展を見てきた。相変わらずよく分からなかったが。2枚のタブローを並べ、キャンバスのそれぞれの同じ位置に色彩の異なる同じ形を置く絵画や、不定形のような粘土の塊の作品、タイルを並べた作品など。
今回も大きなタブローや3~4号くらいの小品、粘土の立体、タイルが並んでいる。「赤坂見附」シリーズはなかった。
上の大きな作品の部分
タイルの作品
この2点が小品
大きなタブローの絵具は盛り上がっており、半透明な色調と筆触が美しい。タイトルが極めて長い。
聖ベルナルドゥスは最小限の睡眠時間しかとらなかった。眠っている時間ほど無駄はない。眠りはひとつの死である(けれど神からすれば死人こそ眠っているだけかも知れない。大きな鼾。だらしのない格好。ただ肉が眠っているだけである。だから食欲や悦びから食べることもなかった。彼は水ほどおいしいものはない、水を飲むと喉がさわやかになると言った。森や野に出て瞑想する。森のミズナラの木。ブナの木が彼の先生であった(ブナの葉は、また彼の唯一の食糧だった)。(黄金伝説より「聖ベルナルドゥス」)
これが大きいタブローのタイトルなのだった。小品はきわめて美しく、欲しいと思ったが数十万円もするのだった。
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岡崎乾二郎展「A Decade or So Ago・As Tears Go By」
2020年8月4日(火)―8月29日(土)
12:00-18:00(日曜・月曜・祝日 休廊)
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Takuro Someya Contemporary Art
東京都品川区東品川1-33-10 TERADA Art Complex 3F TSCA
電話03-6712-9887