きのした いおの絵本『くもつくりびと』が良かったので紹介したい。
くもつくりびと
さく・え きのした いお
くもつくりびと
さく・え きのした いお
北の岬の小さな家に
雲作りの職人が住んでいた
彼の仕事は雲を作ること
作った雲を空へ放すこと
夏の終わりのある晩に
風が窓をたたいた
それは大きな嵐の来る合図
彼は立ち上がる
大きな嵐を作るため
彼は道具をそろえると
雲を作りはじめた
ひとつ またひとつ
彼の作った雲は風に乗り
雨と雷をつれて次々と
遠くの国へと旅立っていく…
嵐を作り続けて四日目の朝
彼は道具をきれいに片付けると
よろよろと
家の外へと出ていった
今まさに新しい朝を迎えた空は
まぶしい光があふれていた
彼はこの空が
なによりも好きなのだった
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以上、全編。エディションのないモノタイプ(1点もの)。制作:木下伊央