荒木経惟『写真ノ説明』を読む

 荒木経惟『写真ノ説明』(光文社新書)を読む。2016年の2月、4年前に発行されている。アラーキーの過去の写真を取り上げて本人が解説している。
 まず光文社新書編集部の企画が安直ではないだろうか。アラーキーの写真は繰り返しダイジェストして紹介されている。それを本人の解説という形で出版しても新しさは出ないだろう。解説と言ってもアラーキーがしゃべっているのを文字起こししているだけに見える。
 しかし決定的なのは、すでにアラーキーの旬が過ぎていることが如実に表れてしまっていることが確認できることだ。アラーキーはエロティックな過激な写真と、私小説ならぬ私写真で世に出たカメラマンだ。それが有名になったアラーキーの私生活がほとんどニュース価値を持たなくなってきたこと、過激なエロスが限界まで達し、それ以上はマスコミにいるアラーキーでは手が出ない世界に至ってしまっていること。アラーキーのエロスの過激さが古びてしまっているのが現代なのだ。ネットの非合法の世界でアラーキーが軽々と乗り越えられてしまっている。
 近作としてポラロイド写真やスライド写真、プリントなどの別の写真を切って貼り合わせるコラージュを発表しているが、もうどんな衝撃も与えてくれない。

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 いくつもの大きな賞や美術館での個展など写真家として与えられる栄誉はすべて得たのではないか。昔林武が文化勲章を受章したとき、いつも時代の先端を教えてくれた友人が、これで林武は終ったなと言って私を驚かせた。そのひそみに倣って、もうアラーキーは終ったと言おう。後は一般ピープルの間で活躍してください。

 

 

写真ノ説明 (光文社新書)

写真ノ説明 (光文社新書)

  • 作者:荒木 経惟
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/02/18
  • メディア: 新書