小山鉄郎『文学はおいしい。』を読む

 小山鉄郎/ハルノ宵子・画『文学はおいしい。』(作品社)を読む。共同通信の配信で全国の新聞に週1回連載したもの。小説やエッセイなどに表れた食べ物を紹介している。見開き2ページで完結し、半ページをハルノ宵子のカラーイラストが飾っている。だから小山の文章は1ページ半。新聞の連載には手ごろな内容だが、単行本にまとめると少々物足りない。100回の連載をまとめているが、よくもこんなに食べものの話題を探し出したものだ、と感心する。
 吉本隆明の食エッセイ集『開店休業』から焼き蓮根を紹介している。吉本は「少年の頃、ごはんのおかずとして3本の指に数えるほどの好物が『焼き蓮根』だった」という。
 角田光代の食エッセイ集『今日もごちそうさまでした』にも焼き蓮根が紹介され、作り方も載っているという。

 角田が友人宅に行ったら「れんこんをただ焼いて塩したものが登場した」「なんにも思わずこれを口に入れて、のけぞった。うまかったのだ。つい、言っていた。『れんこんなのに、うまい!』」
 角田が感動した焼き蓮根は、少し厚めに切った蓮根の両側に軽く片栗粉をまぶして、オリーブオイルで、ゆっくり焼いていくというもので、吉本家とはちょっと異なるが「かんたんで、はっと目を見開いてしまうほど、うまい」と、角田も証言している。

 これは今度作って見よう。
 四方田犬彦の『月島物語』にも当然吉本が登場する。吉本は月島で育ったのだ。四方田のエッセイには「もんじゃ焼と肉フライ」という章がある。月島はもんじゃ焼だが、肉フライも名物だ。「牛の肝臓にパン粉を塗(まぶ)して、トンカツ風に揚げたもの」。すなわちレバカツ。

……吉本が90年の暮れ、ぶらり四方田の家にきた。昔の月島の話を聞き、吉本が育った2軒の家のあたりへ行くが、いずれも消滅。その後、2人は商店街で1枚百円のレバカツを食べる。「子供の頃、1枚2銭だったんですよといいながら、吉本さんはなんと6枚をぺろりと平らげてしまった」という。

 レバカツもうまそう、月島へ行って食べてみたい。カミさんの得意料理の一つがレバーステーキだった。これももう長いこと食べていない。どこに行ったら食べられるだろう。


文学はおいしい。

文学はおいしい。