猪木武徳『戦後世界経済史』を読む

 猪木武徳『戦後世界経済史』(中公新書)を読む。ドナルド・キーンが本には索引が必須と言っていた。索引をみれば、自分に必要な本かどうかが分かるからと。本書の人名索引で「マルクス」を探した。載っていなかった。事項索引には「マルクス主義」が1点だけ載っていた。それは「英国労働党は、元来マルクス主義とは縁が薄く、フェビアンの社会改良主義を背景とした政党であった」という文脈で語られている。元よりそのことは想定済みだった。猪木武徳は保守派の政治学猪木正道の息子だから。副題が「自由と平等の視点から」となっている。
 題名通り世界経済史の分かりやすい概説書となっている。小見出しを拾うだけでも本書の大まかな構成が分かる。戦後の「新しい秩序の模索」「ソ連の農業と科学技術」「通貨改革と経済の奇跡」「日米の経済競争」「東アジアのダイナミズム」「社会主義経済の苦闘」「ラテンの中進国」「脱植民地化とアフリカの離陸」「石油危機と農業の停滞」「東アジアの奇跡」「国際金融市場での破裂」「社会主義経済の帰結」「バブルの破裂」など。
 断片的にしか知らなかったことが体系的に語られている。出版されたのが2009年でもう10年前だが、積読状態でやっと読んだので、少し古くなってしまった。経済史などというあまり縁のない世界だったが、それだけに知らないことが綴られていて400ページを興味深く読んだのだった。

 

 

戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)

戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)