大野和寿監督『歎異抄をひらく』を見る

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 むかし吉行淳之介の対談を読んだとき、吉行が映画館で映画が見られなくなったとこぼしていた。どうってことないシーンで泣いてしまうと。肩が震えると言ったのか、声が出てしまうと言ったのか忘れたが。
 大野和寿監督のアニメ映画『歎異抄をひらく』を見る。高森顕徹の原作をアニメにしている。親鸞とその弟子の唯円を主軸にして、概ね史実に沿って描いている。親鸞が千葉で布教をしていたときに知り合った少年が京都へ去った親鸞を追って京都へ上り、改めて弟子入りする。それにその唯円の幼馴染で盗賊にさらわれて遊女になった娘との関係を絡めて、ドラマチックな筋立てに仕上げてあって最後まで惹きつけられた。
 親鸞が主人公といえば、どうしても浄土真宗の教義など、ややこしい話が欠かせないはずなのに、たぶん誰が見ても退屈しない面白いドラマに仕立てている。同時に親鸞の悩みや葛藤も織り込んでいる。
 なぜか自分が親鸞について多少なりとも知っているのが不思議だったが、たぶんむかし吉本隆明の『最後の親鸞』を読んだためだったろう。わが古代史の師古田武彦にも親鸞についての伝記があった。吉本隆明の『最後の親鸞』は読み直してみよう。