崔実『ジニのパズル』を読む

 崔実(チェシル)『ジニのパズル』(講談社文庫)を読む。主人公パク・ジニは在日朝鮮人3世の女の子。おそらく作者崔とも共通の状況なのだろう。ジニは小学校は日本人小学校に通うが、中学は朝鮮学校に入学する。しかし朝鮮語が話せなかったり、金日成金正日の大きな額が掲げられている学校の方針に反発し、また街でチマチョゴリを着ていて嫌がらせを受けたりし、アメリカの高校に転校する。
 在日の若い娘にこの世界はどこも辛そうだ。それは以前読んだヤン・ヨンヒの『朝鮮大学校物語』を思い出させる。ヤン・ヨンヒ朝鮮総連の幹部の娘だったが、朝鮮総連と日本社会との間でいろいろ辛い体験をする。
 ヤン・ヨンヒははっきりと北朝鮮を批判し、そのような映画を作ったが、ジニは教室に掲げられていた金日成金正日の写真を教室から投げ捨てている。
 崔は本書によって群像新人文学賞織田作之助賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞したという。だが芥川賞の候補になったものの受賞は逃している。
 在日3世の特異な状況を書いて、それは確かに衝撃的な内容ではあるものの、文学作品としては優れた達成だとは言い難い。この後どんな作品を書くのだろう。

 

 

ジニのパズル (講談社文庫)

ジニのパズル (講談社文庫)