吉田秀和『マネの肖像』を読み返す


 吉田秀和『マネの肖像』(白水社)を読む。26年ぶりの再読だった。最近、ここにも紹介した三浦篤エドゥアール・マネ』を読んだことにより、マネにまた興味を持った。むかし『マネの肖像』を読み終わったその日に『マネ』(新潮美術文庫)を購入した。小型の画集なので、今回もう少し大きい画集が欲しいと思ったが手ごろなのがなかった。マネは日本人にモネよりずっと人気がないみたいだ。新潮美術文庫を見ながら吉田秀和を読む。
 吉田はセザンヌ関係の本でも、ヨーロッパの美術館のセザンヌの絵の前で、ここで何時間過ごしただろうと書くくらいじっと見ているようだ。マネでもそれは変わらないみたい。本書は4つの章に分かれている。「マネが描きたかったこと」、「マネの女性像」、「色のコンポジション」、「遊びの精神」。吉田はマネをよく見ている。三浦の『エドゥアール・マネ』(角川選書)を読んだあとでは、マネを学究的に追求した三浦と比べてしまって、初読時の感激には及ばないが、マネに対する傾倒ぶり、(学究的な方法ではなく)純粋に見ることによっての分析はただただ素晴らしい。
 マネの色彩のすばらしさも繰り返し語っている。本書にはカラー口絵が4ページあり、そこに4点のマネの作品が掲載されている。4ページともカラー図版の大きさはそこそこで、図版の周囲にベージュっぽい色が敷かれている。周囲を白くして1ページに4点くらいのカラー図版を入れれば16点載せられる。私は新潮社美術文庫を参照しながら見たが、せっかくの良書が少し残念だ。また初版発行後26年が経っている。どこかの文庫に再録してもいいんじゃないだろうか。
 なお、新潮美術文庫の解説はいまいちだった。まあ、44年前の発行だけど。