東京日本橋堀留町の人形町ヴィジョンズで羽藤雅敏展が開かれている(12月22日まで)。羽藤は1977年神戸市生まれ、大阪芸大美術科を卒業後、関西で活動している。2010年にギャラリー現での個展を見たことがあった。
今回羽藤はヴィジョンズの左手の壁面一杯に1つの作品を展示している。壁面の長さが14mあり、1mほど折り込んでいるので作品の長さは15mもあるという。天地は2mほどか。羽藤はキャンバスに幅5.5cmのストライプを鉛筆で描き、天地3.5cmずつ区切って矩形を作る。その5.5×3.5cmの四角に色を付ける。常に縦に色を着けていって直上の色との関係で次の色を決めている。すでに塗られた左側のストライプの色は参照してないつもりだが、無意識のうちに影響を受けているだろうと言う。意識しない自分の色彩に対する傾向が現れるのではないかと。そのように左端から右側に向かって描いていったものがこの作品だ。常に上の色を参照して次の色を選んでいる。意識して描いたものではないのに結果として羽藤の無意識の色彩が反映していることになっているのだろう、と。
この羽藤の試みは今まで見たことのない画期的なものだと思う。壁面の大きなヴィジョンズでなければ可能でなかった展示だろう。羽藤の思考実験が見事な作品になっている。長大な作品の反対側の壁面には同じコンセプトで作られたF200号の作品が展示されている。同じ手法でもっと小さな作品は作らないのかと問うと、小さな画面では画面が自分でコントロールできてしまうから、同じようなコンセプトで作品を作ることができないのだと。
一見碁盤の目のような単純な造形に見えるが、実はコンセプチュアルな作品なのだった。羽藤の今後の展開が楽しみだ。
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羽藤雅敏展
2018年12月17日(月)−12月22日(土)
12:00−19:00(最終日17:00まで)
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人形町ヴィジョンズVsion’s
東京都中央区日本橋堀留町2-2-9 ASビル1F
電話03-3808-1873
http://visions.jp