山本弘の作品解説(84)「河原んべ」


 山本弘「河原んべ」、油彩、F6号(41.5cm×31.8cm)
 1978年制作。山本弘定番のテーマカッパを描いている。素早い筆運びで墨絵のように描いている。足元の四角い枠を跨ぐように両足を踏ん張り、右腕を曲げて左手に蓮の葉でも掲げているのだろうか。薄く地塗りされた背景に黒と茶でカッパが荒々しく描かれていて、単純化された造形ながら頭の皿がちゃんと白く塗られている。
 左下に置かれた「弘」のサインが茶色で割合大きく書かれているのは、アクセントの意味もあるのだろうか。山本はサインを単純に書くのではなく、いつも画面全体との効果を考えて、大きく強く書いたり筆の尻で小さく線描したりしていた。一見豪放磊落を装いながらも芯は繊細な感性をしていた。と、こんな生意気なことを書いて、弘さん生きていたらなんて言われるか・・・